[MLB短評] New Strike

Mr. Precedent! Strasburg fans 14 in debut(MLB.com)
Pitcher Stephen Strasburg makes his major league debut for Washington Nationals (Washington Post)

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これまでも、そして今でも三振を奪うのを見ていて楽しめる投手は何人もいました。昔であればノーラン・ライアン、ロジャー・クレメンス、今であればティム・リンスカムやロイ・オズワルト、あたりでしょうか。その一方でルーキーのシーズンから大活躍する選手も多くいました(ルーキーシーズンだけで終わってしまった選手も数多いけど)。ただし、そのデビュー戦が試合前から大騒ぎになったルーキー選手はほとんどいません。しいて言えば、1995年の野茂英雄だったり、2001年のイチローぐらいの純粋な意味とは違うルーキーのデビューのときぐらいだったと思います。

しかし、ワシントン・ナショナルズの2009年ドラフト全体1位指名、スティーブン・ストラスバーグはその両方を既に備えていることを、メジャー1試合目にして証明してくれました。現地6月8日のパイレーツ@ナショナルズ戦。普段なら全国的には注目されることがない試合、普段なら1万人前後しかファンが来ないスタジアムを、ストラスバーグは立見席を用意させるほどの超満員にさせました。

さすがにストラスバーグも試合1時間前までは緊張をしていたようで、実際にも1回表の投球でも3ボールまで行くケースがあり、若干の緊張が見られたように思います。しかし、ラインアウト、ゴロアウト、そして3番のラスティングス・ミレッジから初めての三振を奪い、その緊張もなくなり、回を跨いで3連続三振を奪いました。

一方で4回表にストラスバーグは連打を浴び、無死1-2塁というメジャー昇格後初めてのピンチを迎えました。ストラスバーグが偉かったのは、ここで無理に三振を取りにいかず、ギャレット・ジョーンズをショートへの併殺に抑えました(これで2アウト3塁)。この併殺で安心をしたのか、次のデルウィン・ヤングにライトスタンドへライナーのホームランを打たれます。ストラスバーグは、マイナーリーグでの「研修登板」では、ホームランどころか得点を
されること自体がかなり珍しがられていたのですが、ここでのホームランによる失点は意外とあっさりしたものに感じられました。

ただし、このホームランで崩れず、サバサバしたものと受け取ったことが、ストラスバーグが大物なのだと感じます(ライトスタンドへ飛んだホームランボールは、ファンによって受取拒否をされたけど)。4回裏のホームラン以降、ストラスバーグはむしろ逆に良くなりました。三者凡退で終わらせた5回表のジェフ・カーステンズから、7回表まで、ストラスバーグは7者連続三振を奪います。この試合でストラスバーグは、序盤は3ボールまで行くケースがありながらも、後半には、そうしたケースが無かったどころか、ファールで粘られるシーンすらありませんでした。三振を奪うのが素晴らしいのではなく、三振までのテンポとプロセスが素晴らしいのです(そこにはこの日に合わせたかのようにスタメン復帰した将来の殿堂入り捕手イバン・ロドリゲスのリードにも負うところが大きい)。

adf3e1664df422db51e68260195239b2[MLB.comより]

これがストラスバーグの後ろを守るナショナルズの攻撃陣にもテンポを与えました。それが6回裏の逆転劇に繋がったのだと思います。ナショナルズの野手は、自分がストラスバーグと対戦しなくてよかったと感じながらも、大観衆と同じような興奮感を持って守備をしていたはずです。

ストラスバーグはその契約金や足の大きさなどから「大物ルーキー」と称されることが多かったのですが、その期待に応えたのか、もしくはそれを上回ったのか、どちらにしろ、ふつうに驚くべき大物でした。6回表にミレッジを三振に抑えながらも、ミレッジが振り逃げで1塁に走るその前で、ストラスバーグは半ば大物のオーラを漂わせながらマウンドから降り、1塁ベンチ方向へ歩いていく姿が印象的でした。MLB.comがストラスバーグのデビュー戦のためだけの特別サイトを作ったのもうなずけますし、こんなページを作ってもらえるルーキーはもうあと10年以上出ないでしょう。

Stephen Strasburg’s Major League Debut: June 8, 2010 (MLB.com)
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ところで、ストラスバーグのデビューはものすごく計算されていたようにも感じられます。ナショナルズは開幕からストラスバーグをメジャーのロースターに入れることをしませんでした。いきなりフルシーズンをメジャーで過ごすと、それだけFA権の取得が早くなってしまうからです。もちろん、マイナーで細かいメカニック面を調整させてからメジャーに上げるという意味もあります。それでも6月上旬までストラスバーグはメジャー昇格しませんでした。中にはナショナルズはストラスバーグを温存しすぎているのではないか、という声もありました。

しかし、周囲をここまで焦らさせた6月上旬の昇格は結果的に吉でした。まずは地元での試合がデビュー戦として選ばれたこと。次に相手が強打者の少ないパイレーツ戦であったこと。そして、これはナショナルズだけでなくメジャーリーグ全体にとって利益になることですが、この試合がNBAファイナルの真裏に行われたこと。特に今年は現代のスーパースター、コービー・ブライアント率いるレイカーズとセルティックスというNBA屈指のライバル同士のファイナルでした。そこに将来のスーパースター候補であるストラスバーグのデビュー戦をぶつけ、メディアの注目も十分に集め、そしてその期待以上の結果を生み出したことになります。

さらに、ストラスバーグの好投はメジャーリーグ全体の株の高騰にも繋がりました。ワシントンではストラスバーグがメジャーに上がる前からストラスバーグのTシャツの売上がすごかったそうなのですが、このブームが他の都市にも伝染しそうになっています。現地時間の日曜日にストラスバーグが投げるクリーブランドでは、8日の試合後にインディアンズ戦のチケットが4,000枚も売れたそうです。またケーブル局もこれに合わせて中継試合を変更しました。8日の試合後、ノーラン・ライアンは次のようなコメントをしています。

It’s good for baseball 2 have a young and exciting player come into the game and to sell the stadium out in anticipation.

2010年6月8日は、目立たない弱小チームのナショナルズを見逃せないチームに変え(これに今年のドラフト1位のブライアン・ハーパーが加わる予定)、薬物問題の議会証言以外でメジャーリーグに関して注目を浴びることがなかったワシントンDCの空気を1日で変えた日として記録されるはずです。そしてストラスバーグは、メジャー全体を変える可能性を十分に秘めていることが証明されました。今後、ライアン・ハワードやアルバート・プーホールズ、また同じルーキーのジェイソン・ヘイワードなどとの対戦がどのようなものになるのかが非常に楽しみです。メジャーリーグにはスーパースター欠乏症に悩むことはありません。
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[その他の参考記事]
Gammons: New world with young stars (MLB.com)
Bodley: Tip of the Strasburg (MLB.com)
After just one start, Nats’ Stephen Strasburg is game’s biggest draw (SI.com)
Cleveland gears up for Strasburg (SI.com)

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