[MLB短評] Braun turns Gray

ナ・リーグMVPのブラウン、ドーピング陽性(読売新聞) – goo ニュース
Braun faces possible 50-game ban for PEDs (MLB.com)
Braun deserves the benefit of the doubt (MLB.com)
Result is positively bad for baseball(ESPN)
If Ryan Braun’s positive PED test is upheld, baseball writers should demand re-vote for National League MVP (Seattle Times)
Even if NL MVP Ryan Braun is clean of PEDs, MLB never will be (FOX Sports)


ミルウォーキー・ブリューワーズがナショナルリーグ・セントラルの優勝を決めた9月23日、地元で行われた試合の8回裏、ブリューワーズの顔であるライアン・ブラウンがセンターへ試合と優勝を決める超特大のホームランを打った瞬間、誰もがブラウンがナショナルリーグのMVPに最もふさわしいと考えた人は数多いでしょう。自分もあの試合を生放送で見ていましたが、これでブラウンはドジャーズのマット・ケンプを差し置いてMVPを獲得する、そう感じました。そして実際にブラウンは2011年シーズンのMVPとなりました。これにより、ブラウンは友人でNFLグリーンベイ・パッカーズのQBアーロン・ロジャーズ同様、ウィスコンシンの顔から全米の顔へ変わりました。

だからこそ、今回ブラウンからステロイド剤の陽性反応が示されたというESPNの報道は、つい数日前にアルバート・プーホールズとC.J・ウィルソンと大規模な契約を結んだエンジェルズの話題が一気に霞むほどの威力を持っています。メジャーリーグはこの件に関してまだ正式な発表をしていませんが、ブラウンは既に不服申立てを出すことを考えているとも報道されているので、ブラウンがこの件に関連した50試合の出場停止を受けるかどうかはまだ決まっていません。現時点ではブラウンはグレーと呼ぶべきでしょう。

過去にもMVPを獲得した選手がヒト成長ホルモンを摂取していたことが判明したことは、残念ながら幾度かあります。アレックス・ロドリゲスもそうでしたし、ケン・カミニティに至ってはそれが遠因となり既にこの世にはいません。しかしこれまでのケースは、授賞後かなり後になってからそうした事実が発覚しました。今回はブラウンがMVPを獲得してから1ヶ月も経っていません。その上、ブラウンは選手からもメディアからも、そしてもちろんファンからも慕われる人格者として考えられています。ブラウンはシーズン途中に大型契約を結び、2020年までブリューワーズに在籍することになっています。ロドリゲスにしろ、同じく薬物使用が発覚した大スターであるマニー・ラミレスのような選手は、もう先が見えています。一方でブラウンはこれからの選手です。

ESPNによると、ブラウンは10月のプレイオフ期間中に薬物テストのために尿のサンプルを提出し、その結果としてテストステロンが検出されました。これを知ったブラウンは2度目の検査を要求したところ、そのときは陰性でした。2007年の新人王であるブラウンを始めとした同世代の選手は、マイナーリーグで現在メジャーで行われているような薬物テストの手続きを受けており、ブラウンもその手続きとそれによる結果を熟知していると考えられています。今回、ブラウンが故意で摂取したのか、何らかの形で混入されていたのかも含めて、今後ブラウンの行うであろう不服申立ての審理で明らかになるはずです。

ところで、今回の事件により2つの問題が議論されています。

1)ブラウンとプリンス・フィルダー抜きでブリューワーズは来シーズンの開幕後50試合どう戦うのか。
ブリューワーズはシーズン中にブラウンと長期契約を結んだ一方、プレイオフ敗退後にはもうひとりの主砲プリンス・フィルダーを放出することを決めました。名実ともにブラウンがブリューワーズの「プリンス」となるはずでした。しかし仮に出場停止が決まった場合、ブラウンが抜けた穴を埋められるほどの強打者がブリューワーズにはいません。もちろんこのような事実を予知してダラスでのウインターミーティングに臨んだわけではありません。

今シーズン開幕前、ブリューワーズは先発陣の強化で獲得したザック・グレインキーがキャンプ中にバスケットボールを行なっていた際に怪我をしたということで開幕から1ヶ月以上ローテーションにいれられませんでしたが、それでも何とかできたのは、ブラウンやフィルダーのような攻撃陣のおかげでもありました。今回の欠場はそれとは比べ物にはなりません。ブリューワーズは早くも優勝戦線から脱落した可能性すら考えられています。

2)ブラウンのMVPは剥奪されるべきか。またそうなった場合には再度MVP投票をすべきか。
今回、ブラウンは現行のメジャーリーグの薬物規定の下で違反を犯しながらもMVPを獲得しました。この点はそうした規定がなかったロドリゲスやカミニティとは大きく違う点です。かつ、ブラウンは一度目の検査で薬物陽性が出たことを知りながらも、それを公表しませんでした(その代わりに二度目の検査を要求し、陰性反応が出ました)。特に薬物使用に対してタカ派な意見を述べる記者は、ブラウンもメジャーリーグ関係者もその事実を隠したと見ており、だからこそMVPを剥奪されるべきと考えています。仮に今回ブラウンが黒判定を正式に受けた場合には、ブラウンがMVPでなくなっても仕方ないとは思います。

問題は、その結果空いたMVPの枠をどうするか、です。2位投票だったケンプに与えるのか、それとももう一度記者協会で投票を行い、新たなMVPを選出すべきなのか、ということです(その場合、どちらにしてもケンプがMVPを獲得することになるでしょう)。シアトル・タイムズのGeoff Baker氏は、この件に関して「MVPの再投票を行い先例を作る(create a precendent)」べきだと考えています。

If a guy tests positive before results are announced, make it clear that he will not be allowed to keep any award without it being put back in the hands of voters.

This isn’t revolutionary thinking. In the Olympics, medal winners are stripped of their medal awards all the time if they test positive. Sometimes, it takes years to do the retroactive thing.

Baker氏はメジャーリーグにつきまとう薬物問題は記者が広げているのではなくメジャーリーグが解決しようとしていないだけとしており、むしろ記者たちは殿堂入り選手の投票において薬物使用の問題を突きつけられているとしています。今回そのやっかいな仕事がMVPの投票にまで及び、「簡単な解決法」としてMVPの剥奪(それをオリンピックでのメダル剥奪と比較しています)再投票を提案しています。

しかしそこまでにしてMVPの枠を埋める必要があるのかなというのが個人的な意見です。今回のニュースが入ったときに思い出したのが、レジー・ブッシュの一件でした。ブッシュは2005年ハイズマン賞を獲得しながらも、不正な金銭授受が発覚したため、5年後にそれを返却するという形で賞を実質的に剥奪されました。その際に2005年のハイズマン賞をどうするかという議論も起こり、結局のところ他の選手、例えばビンス・ヤングが獲得するのではなく、空位となりました(ちなみに2011年のハイズマン賞がブラウンのニュースが流れた直後に発表されました)。

今回のMVP枠も、これと同じでいいのではないかと思います。仮にどういう形であってもマット・ケンプがMVPを獲得したとしても、ケンプ自身がそれを喜ぶのでしょうか(ケンプもこのニュースを知った時にがっかりしたと報道されています)。オリンピックのメダルは、ほとんどの競技において明確な記録を元に算出され、それにより違反行為が発覚したら自動的に繰り上がります。

しかしハイズマン賞にしろMVPにしろ、いずれも記録だけでなく記者や投票者の印象という不明確な要素により決定されます。少なくとも投票当時において、記者たちはブッシュやブラウンがヤングやケンプよりふさわしいと考えたのだから、それ自体は正しかったということにしたらいいのです。悪いのはブッシュやブラウンであり記者ではありません。再投票というやり方は、記者の行為を修正させて下さいというのに近く、それはこう言っては何ですが、ブラウンの2度目の検査と同じです。

逆にそうした例を今後作りたくないのであれば、記者たちが必死になって魔女狩りのごとく薬物使用の疑いがある選手たちを吊るし上げて、MVP候補を絞っていけばいいのです。ただしファンは薬物使用のニュース自体にはもはや激しい反応を示しません。今回ここまで話題になっているのは、ライアン・ブラウンだからなのです。

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