[MLB短評]オレンジ革命

Jones’ blast vaults O’s into East tie with Yanks | MLB.com (2012/9/7)
Orioles bask in the excitement, atmosphere at Camden Yards – baltimoresun.com (2012/9/7)
Baltimore Orioles’ present catches up with their past | MLB.com: News
Maybe New York Yankees are inferior to Baltimore Orioles – ESPN New York (2012/9/7)

毎年9月のオリオールパーク・アット・カムデンヤーズで目立つ色といえば、フィールドの緑、ライト後方のレンガ色、観客よりはるかに多い空席の深緑、そしてもはや落胆しきっている青ざめたファンの顔、といったところでした。しかし今年のオリオールズはスタジアム全体をオレンジに染めるほどの強さをここまで維持してきました。誰がこの時期にヤンキーズを地元に迎える4連戦が、ヤンキーズとオリオールズの首位攻防戦になると、今シーズン前に予想できたでしょうか。

この4連戦の初日、9月6日はちょうど、カル・リプケンJrが17年前にルー・ゲーリックが持っていた連続試合出場記録を破った日でもありました。この日に合わせて、そしてこの絶対に負けられない4連戦の初日に合わせて、オリオールズはリプケンを称える銅像の除幕式を開き、リプケンだけでなく往年のOBが数多く集まりました。集まったのはOBだけでなく、チームカラーのオレンジのTシャツを着た46,298人ファンで、文字通りスタジアムが埋め尽くされました(若干数ヤンキーズファンも混じっていたようですが・・・)。

そしてこの試合では、オリオールズはオレンジの波にうまく乗り、ヤンキーズはそれと同じ波に飲み込まれる結果となりました。この試合でオリオールズが良かった点は、一見してチャンスが潰えたと思われたところを2度乗り越えてきたことにあると思います。

例えば、1回裏にオリオールズは1アウトから連打とヤンキーズ先発のデビッド・フェルプスのボークにより、ランナーを2・3塁に進めました。ここでアダム・ジョーンズはセンターへ低いライナーを放ちます。見たところふつうのライナーのように見えましたが、結果はボールがカーティス・グランダーソンの前で小さくワンバウンドするヒットでした。三塁走者は本塁を踏むことができた一方、二塁走者はライナーだと思い込み二塁へ戻るのがやっとでした。確かに二塁走者からは判断が難しい当たりでしたが、ここで一瞬、さらなる得点のチャンスがすこししぼんだという空気が流れました。しかし、その直後にマット・ウィンタースが初球を叩き、レフトスタンドへ3ランホームランを放ちました。この瞬間のスタジアムの熱狂ぶりは半端ないものだったのは、テレビを通じてでもわかりました。ESPNで解説をしているアーロン・ブーンのこの言葉がぴったりです。

もうひとつは8回の攻防に現れました。8回表、投手を継投してきたオリオールズは、リリーフのランディ・ウルフが崩れてきたところで、ペドロ・ストロプをマウンドに向かわせます。しかし連続四球やイチローの2点タイムリーヒットなどで1アウトも取れず、試合は同点になります。このときばかりは、オレンジの波は引き潮になり、一部からはデレック・ジーターやアレックス・ロドリゲスにしか向けられないもの、ブーイングがスタジアムから聞こえてきました。

オリオールズはなんとかヤンキーズの反撃を同点までで止めることができましたが、それでも流れがヤンキーズへ向かい始めていると感じられました。しかし8回裏、そのイニングの先頭打者だったジョーンズがレフトへホームランを放ちます。ジョーンズ曰く、

“That’s the biggest hit I’ve ever had in my life.

その後、ウィンタースがライト前ヒットで続き、直後にマーク・レイノルズがこの日2本目のホームランをレフトへ放ちます。ヤンキーズは堪らず投手を交代させますが、クリス・デービスはその初球をライトスタンドへ運びました。1985年、日本のタイガースが見せたあの3連発、ほどではないにしろ、この3本のホームランは、今のオリオールズの強打者たちがかつてのオリオールズのスター選手の前で、そして15年近くお得意様にされ続けてきたヤンキーズに対して、その力を誇示した格好になりました。それはヤンキーズのロドリゲスが、

That was pretty impressive there in the eighth

と感嘆の声を上げるほどの攻撃だったのです。

オリオールズの先発のジェイソン・ハメルはこの試合前にこのようなことを話しています。

I figure on Cal Ripken [Jr.] Statue Night we can’t lose, right? That’s not allowed.

その負けが許されない試合で、オリオールズはヤンキーズの反撃を受けながらも、それに持ちこたえて、重要な試合での勝利を手に入れました。去年までのオリオールズであれば、反撃を受けたらそこで白旗を用意しかねない状況でしたが、今年のオリオールズには、白旗ではなくオレンジの海が味方についています。

思い起こせば、昨年の162試合目、オリオールズはレッドソックスを地元で破り、レッドソックスのプレイオフ進出の夢を潰しました。それ以降のレッドソックスの負のスパイラルは見てのとおりですが、オリオールズは逆に選手同士、または選手と監督の信頼関係がしっかりとできた、素晴らしいチームとして1997年以来のプレイオフ進出を目指しています。木曜日の試合後、バック・ショーウォルター監督は選手たちをこのように評しています。

Nine innings is an exposer of a lot of things — 162 games it’s pretty relentless and heartless. But I really liked the look in our guys’ eyes from the time the game started.

いつもならこの時期のボルティモア市民は、オリオールズに見切りをつけて、NFLのレイブンズ仕様の紫一色に変わり始めるころです。しかし今年は紫もオレンジも同居する10月を迎えることができそうです。

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