[2013ワールドシリーズ 第1戦] Miscue, Miscue

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Boston Red Sox capitalize on St. Louis Cardinals’ miscues in Game 1 win | MLB.com: News (2013/10/24)
Precision tools: Lester’s gem, fast start power rout | MLB.com: News (2013/10/24)
Boston Red Sox pitcher Jon Lester clicks on all cylinders, A to Zane – ESPN Boston (2013/10/24)
Cardinals drop the ball in ugly World Series Game 1 loss to Red Sox – MLB – Tom Verducci – SI.com (2013/10/24)

97勝65敗という、リーグ最高成績を収めたボストン・レッドソックスとセントルイス・カーディナルスが戦う2013年のワールドシリーズは、試合前から絶対に最高のシリーズになるという声で埋め尽くされていました。両チームとも、成績だけでなく、強力な投手陣、抜け目の無い打撃陣、ミスの少ない守備、いずれの性格も似たチームだと言えるでしょう。それどころか、両チームは、どちらの街にとっても大きな事件-ボストンマラソンでの爆発事件と、スタン・ミュージアルの死去-の直後のポストシーズンで、ワールドシリーズまで上り詰めました。そして、両チームとも、リーグチャンピオンシップでは相手のミスを上手く活かした形で勝利を重ねてきました。カーディナルスは、ドジャーズのヤシエル・プイーグの2つの悪送球を、レッドソックスはタイガースのプリンス・フィルダーの中途半端な走塁をきっかけとして、地元で戦った第6戦でシリーズの決着をつけました。

しかし、最高のシリーズになるという期待を抱いてワールドシリーズ第1戦を見ての感想は、レッドソックスが勝ったというより、カーディナルスが負けたというべきものでした。それはカーディナルス先発、アダム・ウェインライトが最初の打者、ジャコビー・エルズベリーと対戦したときからすでに予言されていたようです。ウェインライトは試合前、ダッグアウトからグラウンドへ出る際に、頭をダッグアウトの天井にぶつけたそうです。それが影響したわけではないでしょうが、ウェインライトはエルズベリーに7球投じて、結局四球を与えました。これがすべての始まりだったのかもしれません。

その後、1アウト1・2塁の場面で、ショートのピーター・コズマの落球によるエラーが起こります。最初、このプレイはアウトと判定されましたが、レッドソックス監督のジョン・ファレルの抗議により、判定が覆りました。これはそもそも抗議が起こる前にセーフと判定されるべきプレイだったのですが、結果的には、ファレルはこの抗議により上手く試合の流れを掴み直し、決め球に悩むウェインライトの投球の調子を狂わせることもできました。レッドソックスはここから3点を奪います。
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そして2回裏、ウェインライトとカーディナルスの内野陣は先頭打者のスティーブン・ドリューが放った高いフライボールを見失いました。これはエラー扱いにならなかったとはいえ、カーディナルスでは考えられないプレイが2イニング連続で出たことに、レッドソックス以外のファンは驚きを隠せなかったことでしょう。レッドソックスは動揺を隠しきれていないウェインライトを攻め立て、満塁からダスティン・ペドロイアのヒットで4-0とし、デイビッド・オルティーズが打席に立ちます。オルティーズはウェインライトの甘いボールを右中間のブルペンへめがけて大きなフライを打ち上げますが、ここで16年目にしてワールドシリーズ初出場のカルロス・ベルトランがフェンスにぶつかりながらも捕球しました。これは犠牲フライとなり1失点となったものの、ウェインライトはダッグアウトに頭をぶつけて以来、ようやく目を覚ましたように感じました。ただしこれはカーディナルスとベルトランにとっての「犠牲」フライともなり、フェンスにあばら骨を打ったベルトランはその後フィールドに戻ることはありませんでした

この第1戦、もしかしたらこのシリーズ全体がこの2イニングに凝縮されているかのうような印象を受けます。それも、レッドソックスがウェインライトを打ち崩したというより、カーディナルスが自滅した点があまりにも目立つ内容でした。多くのスポーツニュースのサイトを見ても、レッドソックスが勝利したこと以上に、カーディナルスがこの大舞台の序盤でミスを犯した事のほうが大きく取り上げられているように感じられます。確かにこれまでのワールドシリーズ第1戦でも、ミスを犯して負けたチーム、あるいはそこに乗じて勝利したチームはあるのですが、これほどまでにミスに対して焦点が当てられた第1戦は、正直なところ最近記憶にありません。もちろん、レッドソックス先発のジョン・レスターは素晴らしい投球でしたし、一方でウェインライトは3回以降の投球は素晴らしいものがありました。本来であればこの2人の投手戦で、どちらのチームが数少ない得点機会をモノにするのか、が楽しみなところであったはずです。それほどまでにカーディナルスの負け方は印象的なものになったと言えるでしょう。

ちなみに、ウェインライトが3回裏にレッドソックスを三者凡退に抑えた直後の4回表、カーディナルスは1アウト満塁で得点のチャンスを迎えましたが、デイビッド・フリースが併殺打に倒れました。そのような機会があったこと、ウェインライトの投球がそうした機会をもたらしたことは薄い記憶にすら残っていないことでしょう。同時にこの場面では、過去のワールドシリーズで大活躍をしたフリースが、体調面の影響もあり、今年のポストシーズンを通じて、攻撃でも守備でも過去のような働きができていないことが明らかになりました。カーディナルスはフリースをそれでも使い続けるのかどうかが鍵になりそうです。

9回表に出たマット・ホリデーの一発は、第2戦を前にしてカーディナルスの嫌な空気を吹き飛ばすことができるでしょうか。もしくは、QB不足に悩むセントルイス・ラムズがブレット・ファーブ獲得に動いた(そして失敗した)という、とんでもないニュースが、カーディナルスに浴びせられる冷たい視線を和らげることができるのでしょうか。一方、2004年のワールドシリーズから通算9連勝中のレッドソックスは、これまでどおりに戦えれば勝機があることが第1戦を通じてわかりました。第2戦はどのような光景が見出しを飾るのでしょうか。でも、それが落球やお見合いしている場面ではないことを祈りたいです。

[短評]クライマックスリリーズと選挙制度改革

NPB playoff format less than ideal | The Japan Times Online (2012/10/21)
リーグ優勝しなくても「日本一」に あなたはクライマックスシリーズを支持しますか? – goo ニュース畑 (2010/10/20)

アメリカでは昨年以上にメジャーリーグのプレイオフが盛り上がっている一方、日本でもプロ野球のクライマックスリリーズが盛り上がっている、のだと思います。「思います」というのは、観ていないのでなんともいえないということです。自分がフォローしているアカウントにもよるのだけど、Twitter上では朝から昼にかけて、メジャーリーグのプレイオフの実況ツイートが評論家やプレイオフとは関係ない選手を含めたスポーツ関係者から多くなされるのに対して、夜に行われてるはずの日本の野球に関しては、ほとんど流れてきません。家に帰っても、朝に行われた試合の録画を見るので終始してしまい、クライマックスリリーズがあったことすら忘れさせてくれます。

これらのことはあくまでも個人的な生活パターンなので参考にはなりませんが、多くの人がクライマックスリリーズの仕組みあるいはクライマックスリリーズそのものに疑問を感じているのは確かでしょう。それがTwitter時代において、日本のプロ野球のポストシーズンがクライマックスに達しない要因なのだと思います。

クライマックスリリーズ導入当初から、首位からかけ離れたゲーム差のチーム(場合によっては5割以下の3位チーム)が日本一を決する試合に出場できてしまうことの不可解さは言われ続けていました。いや、言われ「続けて」いるほど今でも関心が保たれているのかも不確かですが。その不均衡さを是正するため、リーグ1位のチームには1勝のアドバンテージを与えたり、リーグ1位のチームが全試合を主催できるようにするなど、一応の策を打ち出しています。それでも、こういう考え方が産まれてしまいます。

確かに、レギュラーシーズンに首位と10.5ゲーム差を付けられながらも、中日ドラゴンズは現状のルールの下で日本シリーズ出場まであと1勝まで来ました。しかし、問題はその入口よりも手前のところにあると思います。そのルールがおかしくて少しでもそのゲーム差に引け目を感じるようなものであるのであれば、それを直す、あるいはいっそのこと無くすことで、制度をよくすることが重要なのではないでしょうか。口約束や慣習法と違い、明文化されたルールの存在意義は、それを順守することと同時に、それを変えることで、より良い制度を作り上げることにあるはずです。

これを見て思い出されるのが、現在の衆議院の選挙制度改革の議論です。最高裁が現在の一票の格差を違憲状態だと判断を下して、これまで放置しつづけてきた国会議員は、やっとこの問題は動き出したかのように見えます。しかし、その任期満了が近づく中、与野党は実のところ、この改正よりも先に衆議院をいつ解散させるのかの議論に躍起となっています。そもそも「0増5減」程度の「改正」で選挙制度そのものが良くなるとは考えられないのですが、現状ではその改正すら行われないまま選挙が行われる可能性もあります。それでも、衆議院は現状のルールの下で当選した議員により運営されることでしょう(ただし、最高裁が違憲状態だと言う制度下で行われる選挙が、後に違憲判決で選挙が無効になる可能性があるともいわれています)。

どちらにも共通しているのは、外から見える風景は疑問を感じるものであっても、中の人達がそれを変えるあるいは見直す意思が外から見えない点です。唯一の違いは、最高裁が違憲状態だと認めているかいないかだけです。現状の制度はおかしい、それでも決まったルールだから従わなければならない、それが日本流民主主義なのでしょうか。

[短評]We have to wait for another.

米2冠馬アイルハヴアナザー電撃引退 左前脚に屈腱炎発症(夕刊フジ) – goo ニュース
I’ll Have Another won’t race in Belmont, trainer says (ESPN)
Paul Moran: Racing history put on hold (ESPN)
I’ll Have Another’s scratch spreads sadness across Belmont Park – Tim Layden (SI.com)

先週、ニューヨークでメッツのヨハン・サンタナがノーヒッターを達成したばかりなのに、現地時間で今週の金曜日、メジャーリーグではまたノーヒッターが達成されました。今回は、マリナーズがシアトルでのドジャーズ戦で、6人の投手の継投によりノーヒッターを達成するという、9年ぶりの珍しい記録です。ひとりで成し遂げようが、何人かで達成しようが、ドジャーズがノーヒットであったことには変化はなく、同時にこれが今シーズンだけでも3回目、シアトルのセーフコ・フィールドにおいては今年2回目のノーヒッター(うち1回は完全試合)となりました。

ノーヒッターそれ自体は、今日もアメリカの各メディアが速報を出したように、開幕3ヶ月以内で3回出たとしても偉大な業績であり、後々にまで投手の名前は残ります。それでも、今年のように何度も達成される時と、1シーズン全く出ない年があるのも事実です。人間が投げ、人間が打つ以上、それは仕方ないことです。一方でメジャーリーグでは三冠王は1967年のカール・ヤストレムスキー以来出ていません。特にここ最近は、アルバート・プーホールズ(今シーズンを除く)やマット・ケンプ、ジョシュ・ハミルトンへ三冠王の期待が掛かりますが、どれか1つのタイトルを逃したりするなど、その難しさは年を重ねるごとに増していきます。

ノーヒッターにしろ、三冠王にしろ、基本的に選手が元気である限り、現役を通じて何度でも挑戦することができます。プーホールズはカーディナルス時代に何度「三冠王に最も近い男」と呼ばれ続けたことでしょうか。しかし、競馬の三冠王、アメリカではケンタッキー・ダービー、プリークネスステークス、ベルモントステークスを指しますが、これを狙うことができるのは、馬と調教師、オーナーにとっては長く、ふつうの人間にとっては短い、3歳でかつ5月から6月にかけての約1ヶ月半だけです(ダービー前のプレップレースなどを考慮するともっと長いのですが)。メジャーリーグの三冠王ほどではないにしろ、1978年のアファームド(Affirmed)以来まだ誰もアメリカの競馬界での三冠王を見ていません。毎年、春の競馬の季節になると、ケンタッキー・ダービーに勝った馬に、早くも三冠王の期待が掛けられます。その中からプリークネスステークスで勝利すると、さらに三冠王への期待が高まります。そしてベルモントステークスになると・・・違う馬が勝ち落胆したまま「また来年に期待しよう!」という声とともに、春の競馬シーズンが終わります。

今年その期待を一身に受けたのが、ケンタッキーダービーでは穴馬だったアイルハヴアナザー(I’ll Have Another)でした。プリークネスステークスでも勝利を収めて、いよいよ34年間の「三冠馬ののろい」が解かれるのかいう期待が高まりました。ベルモントステークスを前にして、ニューヨークのホテルには予約が殺到し、カメラマンたちはゴールラインの良い場所を確保しようと必死になりました。その騒ぎのとなりで、1977年に三冠馬になったシアトルスルー (Seattle Slew) の調教師、ビリー・ターナー氏が「いつかは三冠馬が現れるだろうが、今回はその可能性がかなり高い」とティム・レイデンに語っていました。

そのコメントからわずか30分後、I’ll Have Anotherの調教師が突然、この馬をベルモントステークスへ出さないと発表しました。その理由れは夕刊フジの見出しにあるとおりです。同時にこの馬はこれをもって引退することも発表されました。これまで多くの馬が二冠を制しながらも三冠を逃すということがありましたが、I’ll Have Anotherも残念ながらその仲間入りをしました。しかしそれ以上に残念なことは、I’ll Have Anotherは、ポール・モランがいうところの、「金曜日に三冠を逃した最初のサラブレット」つまり最終戦に出ることなく三冠を逃した第二次大戦後最初サラブレットとなりました。それも怪我による出走回避と引退という形で、です。

左前脚の屈腱炎の原因は何かはまだ不明ですが、特に三冠への期待が掛けられて以降、この馬には精神面だけでなく体力面でも相当の負荷が掛けられていたのでしょうか。それは周囲の盛り上がりや厩舎の期待を考えれば仕方ないことですし、それがサラブレットの宿命でもあります。この三冠レースでも、ベルモントステークス中に怪我をして安楽死処分させられた馬もいます。I’ll Have Anotherは、ベルモントステークスの直前に出走回避することで、そのような悲劇的な運命を辿ることを直前で避けることができました。オニール調教師はこのように語っています。

Could he run and compete? Yes. Would it be in his best interest? No.

アメリカでは競馬への関心はそれほど高くなく、ビジネスとしても盛り上がりに欠けるものとされていますが、逆にこの三冠レースの時期だけにその関心が集中します。30年以上待たされている三冠馬が出そうな場合はなおさらです。I’ll Have Anotherの出走回避のニュースも、各メディアはサンタナのノーヒッターのときと同じ勢いで速報で流しました。同時にアメリカの競馬界も、スターサラブレットの登場を待ち浴びているのと同時に、この期待をもう少し長引かせたいという思いも心のどこかにあるはずです。I’ll Have Anotherの命を考えれば幸せなことでも、この週末のアメリカのスポーツ界において、NBAのカンファレンスファイナル、ヒート対セルティックスの第7戦と同じくらい注目度が高くなるはずだったベルモントステークスが、ふつうの三冠レースのひとつになってしまったことの悲しさが大きいのかもしれません。

ダービー穴馬から三冠馬の大本命にまでのし上がってきたI’ll Have Anotherの細い左前足に、今のアメリカ競馬の全てが集約されているかのような気がします。I’ll Have Anotherはその意に反してもいて、同時に残念あるけどゆっくり休んで欲しいし、そしてファンは、有無を言わずに、再びもう1年待たなければなりません。

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