Cole as Ice: 2011’s top pick shuts down defending champs in debut


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[MLB短評]Different animal

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Puig’s homer sets stage for wild walk-off in LA – MLB.com (2013.6.8)
Maholm’s gem wasted as Braves fall in 10th – MLB.com (2013.6.8)
Dodgers get first walk-off win of season, 2-1 – latimes.com (2013.6.7)
Dodgers’ Yasiel Puig took long road to become overnight sensation – latimes.com (2013.6.7)
Puig no longer a secret as Dodgers face Braves – MLB.com (2013.6.8)

野球にかぎらずどのチームスポーツにも当てはまることですが、ひとりの選手だけでは試合に勝つことはできません。でも、ひとりの選手によってチームの雰囲気が変わることはよくあります。

2週間前のロサンゼルス・ドジャーズで話題になっていたのは、いつドン・マッティングリー監督が解雇させられるか、でした。それはもうひとつのロサンゼルスに本拠地を置く大型補強をしたチーム、エンジェルズの不調と共に、なぜロサンゼルスのチームは勝てないのか、という謎の象徴でもありました。昨シーズンの後半から、あれだけの派手な選手獲得攻勢を図りながら、怪我人(負傷させられた選手も含まれていたけど)を抱えているとはいえ、5割に及ばない成績に苦しむ中、その責任の矛先は自然と監督へ向けられました。ビン・スカリーが試合開始の頃の光景に対してどれだけきれいが言葉を並べても敵わないほど、ドロドロとした空気がチームを支配していました。

そのような中で、外野手の主力であるべきはずのカール・クロフォードとマット・ケンプが怪我をしたため、ドジャーズは6月3日の試合から、キューバ出身の22歳のルーキー、ヤジル・プイーグを器用することを決めました。スプリングトレーニングやマイナーでのこの成績を見れば、その期待度は打席に立つ前から高まってもおかしくありません。
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プイグは早速それに応えました。まずは3日のパドレス戦では、先頭打者として先発したプイグは、第一打席、たった5球目にしてメジャー初ヒットを決めました。

打つ方だけでなく、プイグは試合を決める捕殺でその肩の強さを見せつけました。その翌日、プイーグは2打席連続ホームランでパワーを見せつけました。最初のホームランはレフト、続くホームランはライトへ放ったあたりをみると、プイーグはパワーだけではなく巧さも見せたのではないかと思います。そして、このダイジェストを見てもわかるように、このホームランが劣勢だったドジャーズに試合の流れを持ってくる役割を果たしています。

5日の試合では(やっと)ノーヒットに終わったプイーグは、6日のブレーブス戦では更に大きなことを成し遂げます。まあ、見ればわかります。この光景を見たスカリーがかろうじて発することができた言葉は、”I don’t believe it! A grand-slam home run!”で、ラジオの実況をするチャーリー・スタイナーは”This doesn’t happen even in Hollywood!”と絶叫しました。たった4試合でプイーグは落ち込んでいたロサンゼルスのファンを元気づけたと言ってもいいでしょう。

マッティングリーはこのルーキーを見て”Different animal”と評していますが、そのとおりではないかと思います。と同時に、世間が自分の去就問題から目をそらしてくれるのに手助けしてくれているプイーグに対して、感謝しきれないのではないでしょうか。

そして現地6日の試合でも、プイーグを止めることはほぼ不可能と言ってもいいでしょう。1-0でリードされていた6回裏、プイーグはここまで好投していたブレーブス先発のポール・マホームズの変化球をレフトスタンドへ打ち返しました。デビュー後5試合で4ホームランを達成したのは、1900年以降2人目です。

地元のファンにとっての歓喜は、相手チームにとっては即脅威になりえます。それはプイーグの次の打席で明らかになりました。8回裏、2アウトでランナーを2塁に置いた状況で、ブレーブスはプイーグを敬遠しました。確かにブレーブスから見たら、前の打席ではプイーグにホームランを打っているし、その前の試合では満塁ホームランを打たれています。それだけでなく、プイーグは今週誰よりも好調な選手であることは明らかです。でも、プイーグはまだメジャーリーグでプレイして1週間も経っていないのです。相手チームは、そのような選手でも敬遠しなければならない存在にまで、プイーグは駆け上がっていました。

そのようなプイーグの見えざる力は、延長10回裏、ドジャーズが今シーズン初のサヨナラ勝ちをもたらす要因にもなりました。1アウトからヒットとワイルドピッチにより、ランナー1塁・3塁の場面で、打席にはホアン・ウリーベが立ちます。ウリーベは途中交代で9番打者でした。その後ろにはプイーグが控えています。ブレーブスのアンソニー・バルバーロとエヴァン・ギャティス(このルーキー捕手もいろいろと話題性のある選手ではありますが)のバッテリーとしては、ウリーベにヒットもしくは犠牲フライを打たれないことと同時に、ウリーベに四死球を与えてもいけない状況でした。1アウト満塁になれば、バルバーロは8回裏のようにプイーグを敬遠できないからです。

ただし、ウリーベの前の打席(8回裏、プイーグが敬遠される直前の打席)では、明らかに強振しようとする姿勢が全面に出ていて、快音が聞かれる雰囲気はありませんでした。落ち着いて対処すれば、2アウトで塁が空いた状態でブレーブスはプイーグを迎えることができ、プイーグを敬遠して2番のマーク・エリス(結局この日無安打)との対戦ができます。でも、もはやプイーグが次の打席にいるだけで落ち着けなかったのか、バルバーロはワイルドピッチとなる低すぎるボールを投じてしまい、そのままドジャーズが勝利を収めました。この写真では、がっかりしてベンチへ引き返すバルバーロの後ろで大喜びをするプイーグの姿を写し出しています。別にプイーグのバットが直接的にサヨナラ勝ちをもたらしたわけではないのに、プイーグがいるだけで何かが起こる、それを端的に表しているように感じます。
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ドジャーズの捕手、ラモン・ヘルナンデスはプイーグの効果について、

Right now he brings an energy we were missing

と答えていますが、まさにその通りではないかと思います。2週間前のドジャーズの状況を考えれば、今は首位を走ってるかのようなチームの雰囲気です。一方でプイーグは主力の怪我によりメジャーでのチャンスを掴んだわけですが、シーズン前、有望な若手選手の100人の中には選ばれていなかったといいます。今、そのリストを作った人物は後悔しているはずです。

振り返ると、ドジャーズほど一人のルーキーによりチームの雰囲気が変わってきたことに関して歴史を持つチームはありません。古くはジャッキー・ロビンソンからはじまり、フェルナンド・バエンズエラ、野茂英雄、そしてそのリストにプイーグが加わろうとしています。この1週間、メジャーリーグの話題をひとりで独占し、ステロイド事件の暗さを純粋なパワーと肩の強さで打ち消してくれました。まだ1週間ではないかという疑念派の声があるのも事実ではありますが、プイーグは話の中心になりつつあることは疑いようがないでしょう。

現在、ドジャーズは地元で連戦中ですが、14日からはピッツバーグでのパイレーツとの3連戦があり、プイーグにとって初めてのロードでの試合になります。そして、18日と19日にはヤンキースタジアムでその実力を見せつける機会が訪れます。少なくともこの頃までは、メジャーリーグの世界ではプイーグを話題の中心に据えていることでしょう。

Braves’ Teheran dominates Pirates despite falling short in no-hit bid

Astros find new way to lose, set collision course for worst record in majors

[MLB短評]夏の西高東低

Trade deadline underscores game’s westward power shift [SI.com]

先週末、ハンター•ペンスやシェーン•ビクトリーノはまだフィラデルフィア•フィリーズの一員としてプレイしていました。今月に入り、ふたりは西海岸のチームに移動し、かたやサンフランシスコ•ジャイアンツ、もう一方はロサンゼルス•ドジャーズの一員として、今シーズン、フィリーズでは成し遂げられないであろう目標に向けてプレイしています。

毎年7月の終わりが近づくころ、メジャーリーグの各チームのGMはトレード期限を控え眠れない日々が続きます。かつて、この期限で話題になるのは、決まって東海岸の人気と伝統のある2チームが誰を獲得するのか、でした。しかし今年のトレード期限が終わりわかったことは、あからさまと言えるほどの西高東低でした。

もちろん、その最中でも東海岸のヤンキーズは手薄な外野を厚くするためにイチローを獲得しましたが、今年に限るとヤンキーズはほぼ動かなかったに等しいです。それどころか、ヤンキーズ以外の東部のチームの多くは慣れない売り手に回らざるを得なくなりました。それは、レッドソックスがケビン•ユーキリスをトレードに出したのがすべての始まりだったのかもしれません。トレード期限が近づくと、メディアはレッドソックスはジョシュ•ベケットも出すのではないかとも噂しました。ペンスとビクトリーノを出したフィリーズは、ハメルズ、ハラデイ、リーなどを抱えメジャー最高とも言われた先発投手陣からも、何人かが出されるのではないかと一時噂されました(ハメルズとは長期契約を締結)。

そして新スタジアムを建設し、シーズンオフに大補強をして優勝候補に推す評論家もいた、マイアミ•マーリンズは、一転売り手になりました。ホセ•レイエスやヒース•ベルを獲得し、アルバート•プーホールズ獲得のために準備していたあの時期は一体なんだったのでしょう?ショートを守るレイエスのために、チームは高い能力と複雑な性格を誇るハンリー•ラミレスにショートからサードへのコンバートを説得し、何とか了承を得ました。でもそれから半年もしないで、チームはラミレスをあっさり放出しました。ひと頃の成績を産めず、心機一転、ラミレスにとってもそれがよかったのかもしれませんが、マーリンズの一連の動きは、かつてのフロリダ•マーリンズ時代の叩き売りを彷彿とさせるとまで言われたほどです。

その一方でトレード期限に積極的な獲得の動きをしたチームの多くが「西側」に位置しているのは興味深いです。ちょうど、トレード期限前後にドジャースとジャイアンツ、テキサス•レンジャーズとロサンゼルス•エンゼルズがそれぞれ対決をしていたのも、このトレード戦線を熱くしたとも言えます。

ドジャースがラミレスを獲得したら、ジャイアンツは負けじとペンスを獲り、ドジャースはビクトリーノを獲得する、一方でエンゼルズがザック•グレインキーという名の翼を得れば、レンジャーズはライアン•デンプスターを獲りに行くきました。かつて東海岸で行われたような選手獲得のチェスマッチが今やアメリカの西部で行われたのです。

ちなみに、もっと狭い地域内でも西高東低の動きは見られました。ペンシルバニア州では東にあるフィリーズがここのところ圧倒的に強く、西のピッツバーグにあるパイレーツは、どうしようもない成績を収め続けていました。しかし少なくとも今年はパイレーツの年です。フィリーズが誰を出すか悩む中、パイレーツは先発投手のワンディ•ロドリゲスを獲得しました。

21世紀の初めのメジャーリーグは、一部の例外を除き圧倒的に東海岸の時代でした。ワールドシリーズにはヤンキーズか、レッドソックス、レイズ、マーリンズやフィリーズなど、イーストディビジョンのチームが出場していました。特に東海岸のチームは大きな市場を抱え、豊かな資金力を活かしていました。

しかし選手の世代交代が進むと共に、まるでアメリカの発展の歴史をなぞるかのごとく、メジャーリーグの重心も西へ動きました。昨年、一昨年とワールドシリーズはミシシッピー川の西側で行われています(セントルイスのブッシュスタジアムは川のすぐ西側!)。その動きがこの夏のトレード戦線にもはっきりと反映されました。莫大なテレビ放映権料を活かしたレンジャーズやエンジェルズ、オーナーが代わり安定的な経営をできるようになったドジャースなど、チームの強さだけではない要素も、パワーシフトを助けているようです。

8月になり、ウェイバーを除いて、選手の移籍も一段落着いた格好です。ワールドシリーズへの戦いはフロントオフィスのチェスマッチから、選手と監督同士の総力戦に変わりました。10月になったとき、西高東低の天気図はまだ強いのか、それともヤンキーズや、トレード期限に比較的派手な動きをしなかったワシントン•ナショナルズやシンシナティ•レッズなどがそこに楔を打つのか。ワールドシリーズを狙うチームにとり、長いレギュラーシーズンの本当に長い時期が始まったところです。

[MLB短評]野球と誤審とビデオテープ

Braves walk off in 19th on controversial call (MLB.com)
What does replay solve? (FOX Sports)
Leave Meals — and replay — alone (MLB.com)
Time to expand replay … but be smart (MLB.com)
【MLBコラム】誤審はベースボールの人間的要素の一つである (J Sports)

7月上旬、アトランタ・ブレーブスのチッパー・ジョーンズは審判の一貫性を欠くボール/ストライクの判断に対して、「審判のレベルは平均以下だ」と言い放ちました。フレディ・ゴンザレス監督もその意見に同調します。さすがにジョーンズは大人げないことをしたと気づいたのか、すぐに発言したことに対して謝罪をしました。

ジョーンズが遭った「誤審」は、それにより試合の流れが変わるほどのものではなかったため、ジャッジよりもジョーンズの発言が目立つ格好となりました。皮肉にも、そのブレーブスが同じ月の下旬、審判の誤審により延長にもつれ込んだ重要な試合で勝利を収めました。プレイオフ進出のためには負けが許されないブレーブスは、僅差で地区首位に立つパイレーツを地元に迎えました。3回以降3-3の同点で続いたこの試合で決定的なシーンは延長19回という途方も無いイニングにまで達します。最後の打者が代打として出た投手のスコット・プロクターだったことからも、総力戦であったことがよくわかります。プロクターは1アウト2-3塁の場面で前進守備のサードへボテボテのゴロを打ち、3塁走者のフリオ・ルーゴがそれでもホームへめがけて走る、そしてボールはランナーよりもずっと早くホームへ返球される、それを見た誰もが2アウトになったと思ったはずです。

しかし、主審のジェリー・ミールズにはそう見えませんでした。それは6時間以上もホームプレートの後ろに立っていて、判断が鈍ったわけではないのでしょう。ミールズには、パイレーツの捕手で試合開始からずっとプレートを守っていたマイケル・マッキーニーのタッチがいわゆる「追いタッチ」となり、ミットがルーゴにかすりもしなかったと判断しました。ある選手の発言を借りれば、それは「直感的」なものだったのかもしれません。

いずれにしても、これによりこの重要な試合は終わりました。パイレーツのクリント・ハードル監督の猛抗議は虚しい物になりました。そしてビデオリプレイ導入の議論がふたたび始まりました。これがプレイオフ争いをしていないチーム同士の試合であれば、それほどの騒ぎにならなかったはずです。しかし、プレイオフ進出が掛かるチームと、18年ぶりの勝ち越しどころか地区優勝が掛かるチームでの試合で起こった誤審(一晩あけ、ミールズも誤審であることを認めた以上、これを「誤審」と呼ぶのも差し支えないないでしょう)であったことが重要だと思います。

一方で特にアメリカの野球界では、ビデオリプレイ導入に関しては否定的な意見が多いのも事実です。誤審も野球の要素の一つという考えが根強いのです。通常期でも引き分けがある日本のプロ野球と違い、絶対に引き分けを認めないくらい白黒をはっきりさせるメジャーリーグにおいて、後から議論が生まれる誤審については寛容なのは何だか納得できないのですが、そこには「人は間違いを犯す動物」という野球を超えた考えがあるのでしょう。

同時に野球は他のスポーツと違い、審判が判断を迫られるプレイが多く、ホームランの判断以外にもリプレイがなし崩し的に導入されると、どこでそれをしないのかという線引きがわからないということもあるようです。そのため、導入賛成派であっても、今回のような得失点が絶対に絡むホームベース上でのプレイに関してのみリプレイを導入すべきという意見があります。

現状では、誤審をした審判はミールズにしろ昨年のジム・ジョイスにしろ、その名前はずっと残ることになります。ビデオリプレイにより誤審が覆れば、そうした審判は汚名を被る必要がなくなるかもしれません。しかし目の前のプレイのジャッジも、ビデオリプレイでの判断もどちらも人間の目線で行われることを忘れてはなりません。NFLではビデオリプレイ(コーチによる異議申し立てのチャレンジシステム)が導入されていますが、「判断を覆すに足りる証拠がない」という理由でジャッジが覆らないこともよくあります。結局のところ、ビデオは5人目の審判でも人間の目の代わりではなく、あくまでも証拠の補強材料のひとつにしかなりえないことも理解すべきでしょう。

8月8日からコミッショナー主催の運営会議が開かれます。このときにビデオリプレイの拡大が議論されるのは必死でしょう。しかし拡大の有無に関わらず、最終的な判断が人間によってのみ行われる以上「誤審も野球の要素」という事実は消えません。その点は絶対に誤って考えてはいけない点です。むしろ人々が期待するのは、誤りを犯した後の対応の良さにあるのだと思います。

[MLB短評] New Strike

Mr. Precedent! Strasburg fans 14 in debut(MLB.com)
Pitcher Stephen Strasburg makes his major league debut for Washington Nationals (Washington Post)

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これまでも、そして今でも三振を奪うのを見ていて楽しめる投手は何人もいました。昔であればノーラン・ライアン、ロジャー・クレメンス、今であればティム・リンスカムやロイ・オズワルト、あたりでしょうか。その一方でルーキーのシーズンから大活躍する選手も多くいました(ルーキーシーズンだけで終わってしまった選手も数多いけど)。ただし、そのデビュー戦が試合前から大騒ぎになったルーキー選手はほとんどいません。しいて言えば、1995年の野茂英雄だったり、2001年のイチローぐらいの純粋な意味とは違うルーキーのデビューのときぐらいだったと思います。

しかし、ワシントン・ナショナルズの2009年ドラフト全体1位指名、スティーブン・ストラスバーグはその両方を既に備えていることを、メジャー1試合目にして証明してくれました。現地6月8日のパイレーツ@ナショナルズ戦。普段なら全国的には注目されることがない試合、普段なら1万人前後しかファンが来ないスタジアムを、ストラスバーグは立見席を用意させるほどの超満員にさせました。

さすがにストラスバーグも試合1時間前までは緊張をしていたようで、実際にも1回表の投球でも3ボールまで行くケースがあり、若干の緊張が見られたように思います。しかし、ラインアウト、ゴロアウト、そして3番のラスティングス・ミレッジから初めての三振を奪い、その緊張もなくなり、回を跨いで3連続三振を奪いました。

一方で4回表にストラスバーグは連打を浴び、無死1-2塁というメジャー昇格後初めてのピンチを迎えました。ストラスバーグが偉かったのは、ここで無理に三振を取りにいかず、ギャレット・ジョーンズをショートへの併殺に抑えました(これで2アウト3塁)。この併殺で安心をしたのか、次のデルウィン・ヤングにライトスタンドへライナーのホームランを打たれます。ストラスバーグは、マイナーリーグでの「研修登板」では、ホームランどころか得点を
されること自体がかなり珍しがられていたのですが、ここでのホームランによる失点は意外とあっさりしたものに感じられました。

ただし、このホームランで崩れず、サバサバしたものと受け取ったことが、ストラスバーグが大物なのだと感じます(ライトスタンドへ飛んだホームランボールは、ファンによって受取拒否をされたけど)。4回裏のホームラン以降、ストラスバーグはむしろ逆に良くなりました。三者凡退で終わらせた5回表のジェフ・カーステンズから、7回表まで、ストラスバーグは7者連続三振を奪います。この試合でストラスバーグは、序盤は3ボールまで行くケースがありながらも、後半には、そうしたケースが無かったどころか、ファールで粘られるシーンすらありませんでした。三振を奪うのが素晴らしいのではなく、三振までのテンポとプロセスが素晴らしいのです(そこにはこの日に合わせたかのようにスタメン復帰した将来の殿堂入り捕手イバン・ロドリゲスのリードにも負うところが大きい)。

adf3e1664df422db51e68260195239b2[MLB.comより]

これがストラスバーグの後ろを守るナショナルズの攻撃陣にもテンポを与えました。それが6回裏の逆転劇に繋がったのだと思います。ナショナルズの野手は、自分がストラスバーグと対戦しなくてよかったと感じながらも、大観衆と同じような興奮感を持って守備をしていたはずです。

ストラスバーグはその契約金や足の大きさなどから「大物ルーキー」と称されることが多かったのですが、その期待に応えたのか、もしくはそれを上回ったのか、どちらにしろ、ふつうに驚くべき大物でした。6回表にミレッジを三振に抑えながらも、ミレッジが振り逃げで1塁に走るその前で、ストラスバーグは半ば大物のオーラを漂わせながらマウンドから降り、1塁ベンチ方向へ歩いていく姿が印象的でした。MLB.comがストラスバーグのデビュー戦のためだけの特別サイトを作ったのもうなずけますし、こんなページを作ってもらえるルーキーはもうあと10年以上出ないでしょう。

Stephen Strasburg’s Major League Debut: June 8, 2010 (MLB.com)
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ところで、ストラスバーグのデビューはものすごく計算されていたようにも感じられます。ナショナルズは開幕からストラスバーグをメジャーのロースターに入れることをしませんでした。いきなりフルシーズンをメジャーで過ごすと、それだけFA権の取得が早くなってしまうからです。もちろん、マイナーで細かいメカニック面を調整させてからメジャーに上げるという意味もあります。それでも6月上旬までストラスバーグはメジャー昇格しませんでした。中にはナショナルズはストラスバーグを温存しすぎているのではないか、という声もありました。

しかし、周囲をここまで焦らさせた6月上旬の昇格は結果的に吉でした。まずは地元での試合がデビュー戦として選ばれたこと。次に相手が強打者の少ないパイレーツ戦であったこと。そして、これはナショナルズだけでなくメジャーリーグ全体にとって利益になることですが、この試合がNBAファイナルの真裏に行われたこと。特に今年は現代のスーパースター、コービー・ブライアント率いるレイカーズとセルティックスというNBA屈指のライバル同士のファイナルでした。そこに将来のスーパースター候補であるストラスバーグのデビュー戦をぶつけ、メディアの注目も十分に集め、そしてその期待以上の結果を生み出したことになります。

さらに、ストラスバーグの好投はメジャーリーグ全体の株の高騰にも繋がりました。ワシントンではストラスバーグがメジャーに上がる前からストラスバーグのTシャツの売上がすごかったそうなのですが、このブームが他の都市にも伝染しそうになっています。現地時間の日曜日にストラスバーグが投げるクリーブランドでは、8日の試合後にインディアンズ戦のチケットが4,000枚も売れたそうです。またケーブル局もこれに合わせて中継試合を変更しました。8日の試合後、ノーラン・ライアンは次のようなコメントをしています。

It’s good for baseball 2 have a young and exciting player come into the game and to sell the stadium out in anticipation.

2010年6月8日は、目立たない弱小チームのナショナルズを見逃せないチームに変え(これに今年のドラフト1位のブライアン・ハーパーが加わる予定)、薬物問題の議会証言以外でメジャーリーグに関して注目を浴びることがなかったワシントンDCの空気を1日で変えた日として記録されるはずです。そしてストラスバーグは、メジャー全体を変える可能性を十分に秘めていることが証明されました。今後、ライアン・ハワードやアルバート・プーホールズ、また同じルーキーのジェイソン・ヘイワードなどとの対戦がどのようなものになるのかが非常に楽しみです。メジャーリーグにはスーパースター欠乏症に悩むことはありません。
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[その他の参考記事]
Gammons: New world with young stars (MLB.com)
Bodley: Tip of the Strasburg (MLB.com)
After just one start, Nats’ Stephen Strasburg is game’s biggest draw (SI.com)
Cleveland gears up for Strasburg (SI.com)

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