[半周遅れのスーパーボウル48 その1]New Normal

Seattle Seahawks stomp Broncos for Super Bowl win – NFL.com (2014.2.2)
Seattle Seahawks’ dominant defense: A frightening ‘new normal’- NFL.com (2014.2.3)
Kam Chancellor was most deserving of Super Bowl MVP honors | The MMQB with Peter King (2014.2.6)
Seahawks’ defense too fast, too furious for Broncos in Super Bowl – The Denver Post (2014.2.2)

第48回スーパーボウルから1週間が経過してしまいましたが、改めて振り返りたいと思います。

初のニューヨーク、それも寒空の下、屋外のスタジアムで行われるスーパーボウルは、いつものスーパーボウル同様、試合前から様々な予想がなされました。ペイトン・マニング率いるデンバー・ブロンコスのオフェンスは寒さの中でどれだけ機能するのか、というところから、スーパーボウル当日は大雪になるのではないかと、想像するネタには絶えないものでした。

いざ試合が終わってみると、全くもって予想外の結果となりました。一つ目は気温。マイナス10度以下をも記録したこの冬のニューヨーク(正確にはニュージャージーではあるけど)において、スーパーボウルの試合開始時の気温は、華氏49度(摂氏9.4度)でした。この時期のニューヨークの夜の気温としては、十分に暖かいものです。

そしてそれ以上に予想外だったことは、その試合内容でした。スーパーボウルの予想においては、願望も込めて接戦の結果を弾き出すものです。それがまさかの、シーホークスがブロンコスを圧倒した形での勝利するとは、シーホークスの勝利を予想した評論家ですら考えていなかったことでしょう。そのスコア43対8。マニングのオフェンスをもってしても、シーホークスのディフェンスをこじ開けることは、試合終了までできませんでした。

しかし、NFCプレイオフ第1シードのシーホークスは、AFCプレイオフ第1シードのブロンコスに対して、何か特別なことを仕掛けて勝利したのかというと、決してそうではありませんでした。特に、シーホークスのディフェンスは、マニングを抑えるためにごくごく当たり前なプレイで対応し続けました。それは、ディフェンスラインがマニングにプレッシャーを与え続け、LBやDB陣はマニングにパスを通させても、パス後のラン(いわゆる「ラン・アフター・キャッチ)を許さないことにありました。

マニングはこの試合において49回パスを投げて34回パスを成功させました。これはスーパーボウル記録です。しかし、スーパーボウルを見た後で人々の記憶にあるのは、マニングのパスの数ではなく、シーホークス守備陣がボールを持つブロンコスの選手に対して素早く集まる光景(swarm)であり、DB陣のハードヒットでした。それにより、10ヤードはブロンコスのオフェンスにとって長い距離となりました。1stクォーター早々に出たこのプレイは、この試合を象徴し、かつ残り時間を支配するものになったと思います。
2-7-DEN 38 (9:53) (No Huddle, Shotgun) 18-P.Manning pass short middle to 88-D.Thomas to DEN 40 for 2 yards (31-K.Chancellor).
このキャム・チャンセラーのハードヒットは、シーホークス守備陣のフィジカルさを表していました。このプレイについて、試合後、チャンセラーはこのように語っています。

まさにそのとおりだったと思います。ブロンコスのオフェンスは、これに怖気づくことはなかったにしろ、この試合を通じて、シーホークスの激しいヒット、ボールへの素早い集まりに悩まされ続け、かつ、そこに解決策を見出すことはできませんでした(後半、ブロンコスがこの試合唯一の得点となったTDを挙げたシリーズがありましたが、あのシリーズでは、シーホークスのディフェンスは、言葉は正しくないですが、本気を出していませんでした)。

でも、シーホークスのディフェンスはマニングに対して何かを合わせてきた様子には見えませんでした。チャンピオンシップからスーパーボウルまでの期間中の主役だったリチャード・シャーマンが、スーパーボウルの2日後、自分たちはマニングのパスルートを読むことができていたと発言しましたが、それが本当だとしても、シーホークスのフィジカルなディフェンスは、いつもどおり(normal)なもの、もっといえば、FSのアール・トーマスがいうところの”new normal”だったと言えるでしょう。

01
* ブロンコスの80番 ジュリアス・トーマスのパスキャッチ後、1stダウンを許さなかったシーホークスディフェンス

一方、そのディフェンスの活躍に見過ごされ気味のシーホークスのオフェンスもまた、マニングへの正しい対処法を備えた上で試合の主導権を握りました。これもまた、特に変わったプレイを仕掛けたわけではありませんでした。シーホークスは、思いもよらぬ形で試合開始早々に2回も攻撃権を得ることになりましたが、その2シリーズにおいて、シーホークスは10分40秒に渡りボールを保持し続けました。特に2回目のドライブでは、QBラッセル・ウィルソン率いるオフェンスが効果的に3rdダウンを更新し続けたことが大きかったと言えます。特にこのパスは、マショーン・リンチのランやウィルソンのスクランブルあるいはショートパスを警戒して、前のめりになっていたブロンコスのディフェンスの心を挫くのに効果的でした。そして、ウィルソンのパスのコントロールもまた素晴らしい物がありました。

3-5-DEN 43 (4:26) (Shotgun) 3-R.Wilson pass deep left to 89-D.Baldwin to DEN 6 for 37 yards (24-C.Bailey).
Super Bowl XLVIII - Seattle Seahawks v Denver Broncos

この展開は、AFCチャンピオンシップにおいてマニングがニューイングランド・ペイトリオッツのトム・ブレイディに対して行ったことと重なります。この試合、特に後半最初のドライブはその象徴と言えますが、マニングはペイトリオッツへ攻撃権を与えないような形でオフェンスを展開していきました。その結果、例えば3rdクォーターにおいては、ブレイディはその2/3をサイドラインのベンチに座って試合展開を見るか、肩慣らしのキャッチボールをするしかありませんでした。スーパーボウルでは、ウィルソンがマニングに、マニングがブレイディに取って代わりました。

しかし、さらにすごいと思ったのは、後半のシーホークスのオフェンスが全く手を緩めなかったことです。あの試合の流れを考えた場合、ランで時間を稼ぎながらある程度前へ進ませて、最低でも3点、うまくいってTDを取りに行ってもおかしくありませんでした。特に後半のキックオフで、パーシー・ハーヴィン(試合前半のリバースプレイを含め、この試合で攻撃陣のキープレイヤーとなりました)がリターンTDを決めて、得点差を広げたこともありました。それでも、シーホークスは心身共に疲れきったブロンコスのディフェンスを手玉に取り、TDを重ねていきました。

この試合では、シーホークスの素晴らしいところだけがニューヨークのネオンに照らし出さました。鮮やかなほどの圧勝、接戦になる瞬間は全くない、シーホークスはシーズン最後にして最高の試合、そしていつもどおりのことをしっかりと行うことができました。
Spokesman Review 20140203

広告

Wilson fires first pitch at Mariners game

[NFL短評]Beastmode Seahawks

nfl_u_russone_cr_576
Seattle Seahawks keep it rolling with blowout of San Francisco 49ers – NFL.com (2012/12/23)
Seahawks and their QB are hotter than hot – NFC West Blog – ESPN (2012/12/24)
Sunday night wrap-up: Wilson showing his maturity | ProFootballTalk (2012/12/23)
Believe it, Hawks are best team in the NFL right now | Jerry Brewer | The Seattle Times (2012/12/23)

12月23日のサンデーナイトフットボールで、シアトル・シーホークスにとって唯一残念だったこと、それは3試合連続で50得点できなかったことでした。あと8点足りなかった・・・でも、アメリカの北西角の街から全米中にその強さを示すには全く問題のない試合でした。プレイオフ進出、地区優勝争いのために絶対負けられない試合で、シーホークスは完膚なきままにサンフランシスコ・49ersを印象的な形で打ち破りました。

この試合で印象的だったこと一つ目は、RBのマショーン・リンチでした。シーホークス最初のシリーズで、リンチはハンドオフを受けてからブロッカーを信じて左サイドから24ヤードを走りぬけ、最後はタックルを受けそうになりながらもTDを上げました。この試合を通じて、リンチは力強いランでシーホークスのオフェンスにいいリズムを与え続けました。その活躍を前にして、49ersのRBフランク・ゴアの影は試合を通じて薄いままでした。

二つ目はシーホークスのディフェンス陣。この日のスターターにはビッグネームと呼べるほどの選手は揃っていませんが、組織としてのシーホークスの守備陣は、その堅さで名前を売ってきた49ersの守備陣から主役の座を奪いました。とにかくシーホークスの守備陣はボールへの集まりが非常に早い印象を受けました。同時にセカンダリー陣は49ersのレシーバー陣を試合序盤からうまくカバーしていました。そのため、49ersの若きQBコリン・キャパニックはスクランブルをせざるを得ませんでした。それは明らかにデザインされたプレイではなく(キャパニックはランが得意ではあるけど)、仕方なく走った、その印象を受けるものでした。

その象徴がコーナーバックのリチャード・シャーマンでしょう。スペシャルチームでも出場したシャーマンは、デビッド・エイカーズのFGがブロックされた後、跳ね返されたボールを拾い上げ、90ヤードを独走してTDを上げました。それだけでなく、4thクォーター最初のプレイで、シャーマンはランディ・モスをしっかりマークし、エンドゾーンでインターセプトを決めました。スタンフォード大学出身のシャーマンは、在籍当時のスタンフォード大学ヘッドコーチで49ersのヘッドコーチを務めているジム・ハーボーの49回目の誕生日に、自らの活躍を示すことで、それを誕生日プレゼントとしました

また、シャーマンのリターンTDの前に、セーフティーのキャム・チャンセラーが49ersのTEバーノン・デービスに対してハードヒットをしました。審判はこれに対してパーソナルファールを宣言しました。恐らくはあのタックルはヘルメットによるヘルメットへのタックルとみなされたようですが、あれがなければ、デービスはTDを奪い、試合の流れはわからなくなっていたはずです(仮に反則でなくクリーンタックルだったとしても、次のプレイはあの位置から始まったので結果は同じ)。これにより、デービスは軽い脳震盪で試合を離れることになりましたが、それ以上に、49ersはその後のFG失敗を含めて得点機会を失いました。それだけ、シーホークスの守備陣のボールに対する執念がこの試合では優っていました。

2019974400
キャム・チャンセラーのハードヒットで倒されるバーノン・デービス

三つ目はシーホークスのルーキーQBラッセル・ウィルソン。シーズン前、多くのファンは「ウィルソンって誰?」という存在でした。第4週のマンデーナイトフットボールでは、ウィルソンは代理審判によるあの疑惑の判定で試合が決まった時に、ロールアウトからロングパスを投げたQBでした。しかし、今やウィルソンは「あぁ、あの時のQBか」というトリビア的存在ではなく、「あぁ、あの沈着冷静なQBか」という印象を全米に与えたことでしょう。それを印象づけたのが、ウィルソンがこの試合2本目のTDパスを決めたシリーズでした。自陣40ヤードという好位置から始まったシリーズで、ウィルソンは急いで前へ進むことはせず、リンチのランや短いパス、時には自らのスクランブルで我慢強く前進を図りました。そして前半終了2分前を控えた最後のTDプレイでも、TEのアンソニー・マッコイにモーションを命じ、プレイクロックが0秒になるまで待ってからプレイを始め、そのマッコイへパスを決めました。NBCの放送ではこのプレイでの時間の使い方を高く評価していました。このプレイでコールをする際にマウスピースがこぼれ落ちながらも、それを口に入れなおすことができるくらい冷静なウィルソンには、1秒を他の人よりも長くできる能力があるかのようでした。

そしてこの試合で印象的だったことの最後は、シーホークスのファンでしょう。NFLのフランチャイズでもトップクラスのうるさいフィールドと言われるこのシアトルのスタジアムにおいて、この日のファンはいつも以上に相手チームの攻撃陣にプレッシャーを与え続けました。その結果、まだ先発就任から日が浅いケーパニックは1stクォーター、試合開始から10分以内に2回もタイムアウトを取らざるを得ませんでしたし、前半に2回もディレイ・オブ・ゲームの反則を取られました。元々の先発QBアレックス・スミスの脳震盪により先発に取って代わったケーパニックにとって、この日は、最も辛い洗礼を雨のように受けた日だったに違いありません。

プレイオフ進出すら難しいだろうと言われていたシーホークスは、ここに来てプレイオフ進出を決めました。同時にウィルソンは今年の新人王候補として、ウィルソンよりも上位指名を受けたQB(ロバート・グリフィンとアンドリュー・ラック)と肩を並びました。今のシーホークスは、58点とか50点とか42点とか、ウィルソンのQBレーティングとか、見える力(数字)だけでなく、ボールへの執念やうるさすぎるファンの声援が与えるプレッシャーなど、見えざる力による複合的なの強さがあります。それに加えて、この時期にきて強さの源がひとつの流れとなり、”#BEASTMODE”の本気スイッチがONになったようです。シーホークスのファンは今すぐサンタクロースに希望するクリスマスプレゼントを「スーパーボウル優勝」に変えるべきです。

2019974192

[NFL短評]The bad call heard around the world

Debated Hail Mary gives Seattle Seahawks win over Green Bay Packers – NFL.com (2012/9/24)
Dissecting the Seahawks-Packers final play – Seattle Times (2012/9/25)
Web explodes over replacement refs call against Packers – ESPN (2012/9/25)
NFL supports decision to not overturn Seahawks’ touchdown – NFL.com (2012/9/28)
Packers-Seahawks call underscores need for real refs to return – NFL.com (2012/9/25)
Obama: Disputed game means NFL needs regular refs – NFL – SI.com (2012/9/25)

プロスポーツ、特にチームスポーツの試合を構成するにあたり重要な要素は何でしょう?

ひとつは一流の選手。これは言うまでもありません。彼らはその持ちうる力、いや持ちうる以上の力を試合内で発揮します。彼らはそのために絶間ぬトレーニングを怠りません。

もうひとつは一流の監督とコーチ。彼らには選手が持つ能力を引き出し、性格の違う選手たちをまとめあげ、そしてチームを勝利へ導く力が要求されます。選手がトレーニングをするように、監督やコーチたちは戦術に研究を怠ることはありません。

そして実際の試合で重要となるもうひとつの要素が、一流の審判です。審判には公平かつ公正、どのような状況でも沈着冷静でかつ正確性を伴う即決即断の能力が要求され、試合を開始から終了まで滞りなく進ませることが要求されます。

それでも、実際には試合は人間が行うものである以上、ここに挙げられた要素すべてが100%の能力を発揮するとは限りません。選手はプレイでミスを犯したり、けがをすることもあります。コーチたちが練り上げた戦略は相手の戦略に負けたり、選手の入れ替わりなどでその変更を迫られることがあります。審判だって、試合開始から終了まで、シーズン開始から終了まで、完璧なジャッジができるわけではなく、いつ、どこかで間違えを犯すことだってあります。一方で戦略や能力を超えるプレイにより試合が決まることもあります。全てが予定通りにいかない、だからこそスポーツの面白さがあるのだと思います。

しかし、今のNFLではこの三位一体のうちのひとつを欠いた状態で成り立っています。一流の審判です。昨シーズン開幕前、NFLは労使問題を理由に選手会をロックアウトし、開幕そのものが危ぶまれました。今シーズン、NFLは労使問題(年金積み立てや契約金額という金銭面の折り合い)を理由に審判組合をロックアウトしたまま開幕を迎えました。当然、審判がいなければ試合は成立しませんので、リーグは「代理審判」(replacement referee)を立ててプレシーズン、そしてレギュラーシーズンを進めることとしました。

NFL JAPAN.COM|リプレイスメントはNO!一流の試合には一流のジャッジを [近藤 祐司](2012/7/20)

今シーズンの優勝チームはどこか、ロバート・グリフィンやアンドリュー・ラックはどこまでNFLで戦うことができるかという期待と共に、果たして「代理」審判がフットボールの、というよりNFLの複雑なルールを理解しているのか、そして選手たちから信頼を勝ち得て試合を運営できるのか、そのような心配も抱えながら、NFLは開幕を迎えました。

正直なところ、個人的にはこの代理審判に関してはそこまで心配をしていませんでした。というより、多くのファン同様にそれほどの関心を払っていなかったと言ってもいいです。それ以上にNFLの開幕自体が楽しみでしたし、ロックアウト中の正規審判(regular referee、という呼び名がいつの間にか定着してしまった)だってこれまでいろいろとミスをしてきたのだから、代理審判は正規審判が帰ってくるまでそれなりにがんばってもらえれば十分じゃないか、と楽観視していました。

しかし、そうした代理審判への楽観視も、新しいシーズンへの高まりも、全て代理審判が打ち崩してくれました。多くの人は、開幕週に関しては大目に見ていたと思いますが、その堪忍袋の緒は2週目にして切れました。

NFL JAPAN.COM|不安が現実に!窮地に立たされた“代役審判” [近藤 祐司](2012/9/21)

このコラムにも書かれているように、とにかく代理審判はNFLの試合とルールに不慣れで、かつそれと同じくらいにフットボールのルールにすら不慣れなのではないかと思えてきます。そういうものは、恐らくはジャッジに対する自信のなさから来ているのでしょう。それでも、何度も審判が協議したりビデオを見たりして、ジャッジがひっくり返される事態を見るにつけ、この審判団の下すジャッジに対する不安が募ってきます。そして不安はそのまま、代理審判とNFLに対する不満へと繋がっていきます。試合後、選手やコーチからは決まって代理審判への文句が出てきます。

こうした問題が出てきた場合、通常は何が問題かを精査して、次のときまでには改善が図られるはずです。しかしNFLの見解は「正規の審判でもミスをするのだから、代理審判でも問題はない」というものでした。NFLとしては、労使問題で対立する正規の審判を閉めだしてまで代理審判を使っている以上、そう言わざるをえないところもあるです。一方でNFLは、現地9月23日夜の試合で、ニューイングランド・ペイトリオッツのビル・ベリチックHCが試合終了直後に審判の一人の肩に掴みかかるまでに、この問題が広がっているとまでは予想しなかったでしょう(ベリチックは審判に何かしようとしたのではなく、説明を求めようとして肩に手がかかったと主張)。

このベリチックの事件は序の口以前でした。それからほぼ24時間後、NFLの歴史に残る疑惑の判定、もっといえば「誤審」が発生しました。それが全米向けに、そしてローマ法王も見ていると言われているマンデーナイトのグリーンベイ・パッカーズ@シアトル・シーホークスの試合終了直前に出たこのプレイでした。

4-10-GB 24 (:08) (Shotgun) 3-R.Wilson pass deep left to 81-G.Tate for 24 yards, TOUCHDOWN [52-C.Matthews]. The Replay Assistant challenged the pass completion ruling, and the play was Upheld.Highlight Video

まさにこのプレイが、というよりこのプレイに対するジャッジが、パッカーズが勝利しかけたこの試合の結果を変えました。この試合において、パッカーズのQBアーロン・ロジャーズは、前半だけで8回もサックを浴びました。パッカーズはそこから巻き返し、逆転勝利を収めて、意気揚々とスタジアムを後にしようとしました。しかしロジャーズをはじめとしたパッカーズの面々は意気消沈することを忘れるほどのこみ上げる怒りの中、スタジアムを去らなければなりませんでした。ガードのT.J・ラングの一言が全てです。

問題となった11秒間のプレイについては、シアトル・タイムズが事細かに紹介しています。

・もともと右へロールアウトするはずだったシーホークスQBラッセル・ウィルソンが左にロールアウトした
・最後のTDパスを取った(とされる)WRゴールデン・テイトは、エンドゾーンへ走りこむ前にディフェンスの選手を妨害していた(本来ならそれにより無資格補給者になるはずだった)
・エンドゾーンでテートとパッカーズの選手たちによる「同時捕球」(Simultaneous Catch)が起こり、ルールに則り攻撃側の捕球が認められた

Rule 8, Section 1, Article 3, Item 5
Simultaneous Catch. If a pass is caught simultaneously by two eligible opponents, and both players retain it, the ball belongs to the passers. It is not a simultaneous catch if a player gains control first and an opponent subsequently gains joint control. If the ball is muffed after simultaneous touching by two such players, all the players of the passing team become eligible to catch the loose ball.

自分がこのリプレイを見た時、どこが「同時捕球」なのかと直感的に思いました。明らかにパッカーズのM.D.ジェニングスが先に確保しているように見えます。その時には”It is not a simultaneous catch if a player gains control first and an opponent subsequently gains joint control.”になります。

それはともかく、ここで注意して欲しいのは、テートの妨害行為がなかったと仮定して、もし正規の審判がこのプレイをジャッジしていたとしても、その結果はどちらに転んでもその夜のESPNのトップ項目になっていたということです(きっと正規の審判であれば、テートの妨害に対して反則をとっていたことでしょう)。そして翌日、NFLはこのプレイについて何らかの説明を求められたことでしょう。今回、NFLはこのプレイを見直した結果、以下のように判断をしました。

The result of the game is final.

でも、正規審判がふつうに試合に立っていた場合、この試合のこのプレイは、よくある疑惑の判定のひとつとして、すぐに忘れ去られるものになっていたはずです。ところが、この盛り上がりはスーパーボウル直後を想起させるものがあります。この日の夜、国連総会で演説したオバマ大統領までもがツイッターで以下のようなコメントを寄せたほどです。

なぜここまでの騒動になったのか、それはひとりの審判がパス失敗と言いながらも、もうひとりの審判が両手を高々と上げてタッチダウンを示した、あの一瞬にあったと言えます。あれが開幕以来多くの人々が気づいていたことの全てを表現しています。代理審判は信頼できない、ということです。そして同時に、これは正規審判との労使交渉の解決を渋り、いつまでも代理審判を使い続けるNFLへ不満をぶつけるのに格好の材料にもなりました(そのことは、現時点でも十分な保障を与えられながらも、さらに多くを求める正規審判側へも矛先が向けられるべきことです)。NFLにとってここまでのできごとは「想定外」だったのかもしれませんが、ジャック・ウェルチは現地25日の朝、危機管理の面からNFLの対応に対して厳しい判断を下しています。NFLは一流の選手のプレイと一流の戦術家が繰り出す試合に対して、質が落ちるとしても、形だけ審判を置こうという誤った考えを持っていたのです。

そのような中、ようやくNFLと審判組合が歩み寄りを見せ、ロックアウトが終息する見込みというニュースも流れています。文字通り全米中を支配したこの労使問題は解決に近づいています(その意味では、大統領の一言は大きかったのかも知れません)。一方で、あの試合で悲劇を味わったパッカーズも前進のときを迎えようとしています。

今回の代理審判問題、正規審判とリーグの労使問題、そしてマンデーナイトのラストプレイは、一流のプロスポーツの試合において何が重要なのかを改めて考えさせてくれました。選手・監督・審判全てが不可分なのです。そしてそれらがあるところに初めて、一流のプロスポーツを構成する最後のピース、ファンが集まるのです。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。