[2013ワールドシリーズ第3戦]Thin red line

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On obstruction call, Cards walk off for 2-1 Series lead | MLB.com (2013/10/27)
Wild finish offsets rare misstep from St. Louis Cardinals bullpen | MLB.com: News (2013/10/27)

2013年ワールドシリーズ第3戦は、史上初の走塁妨害によるサヨナラ勝ちという、最も稀な形での決着を見ました。果たしてこのジャッジ自体が正しかったのかどうかも含めて、試合後もかなりの議論が行われました。走塁妨害のルールについては、この画面が多くを語っているように思います。

そして試合後にもいくつかの「もし」も語られていました。その最大のものが、なぜレッドソックスはマイク・ナポリを代打で使わなかったのかということです。特に9回表、リリーフ投手のブランドン・ワークマンがそのままバッターボックスに立ち、当然ながら三球三振で簡単にひとつアウトをカーディナルスへ献上しました。このような結果となり、ジョン・ファレル監督はこの「なぜ」に説明をせざるを得ませんでした。

John Farrell explains decision not to use Mike Napoli | MLB.com: News (2013/10/27)

I felt like we had four outs with Koji, four to five outs. If the thought was to go for a two-inning outing for Koji, we would have pinch-hit for Workman the inning before. We were trying to get two innings out of Workman. Once his pitch count was getting in the 30s range, with the go-ahead run on base, that was the time to bring Koji in, even though this would have been five outs. We fully expected him to go back out for the 10th.

本来であれば、不調のジャレッド・サルタラマッキアで攻撃が終わった8回表のあと、ファレルはダブルスイッチを行い、ワークマンともうひとりの捕手、デイビッド・ロスをフィールドへ出すべきだったのかもしれません。ファレルはその点を悔いています。これはナショナルリーグとアメリカンリーグでの指揮の違いが出た形なのでしょうか。

Farrell most regrets not double-switching when he brought Workman into the game in the eighth inning — a common move in the National League. Had he done so, he would have removed catcher Jarrod Saltalamacchia, who made the final out of the top of the eighth, and inserted Workman into his spot. Then he would have put backup catcher David Ross into the lineup batting ninth.

ただ、この試合は走塁妨害やファレルの采配以上に不思議な事がずっと起こっていました。それは、先制したカーディナルスはモメンタムを奪いながらも、それを保持し続けることができなかった点です。でもカーディナルスは勝ちました。それは、カーディナルスは要所を締めていたからだったからのように感じます。試合後、このような疑問が出されました。

ある意味、この答えはYesと言えます。それは、結果的にこの試合で一度もリードを奪われなかったカーディナルスは、すべての得点をレッドソックスの三者凡退の後に挙げていることです。1回表、先発のジョー・ケリーの素晴らしい立ち上がりを見せた後、カーディナルスはレッドソックスのジェイク・ピービーを打ち崩しました。恐らく、このシリーズを通じて、エラーも含まない形で相手投手を連打で打ち崩したのは、あの場面が初だったと言ってもいいでしょう。

また、レッドソックスに追われていた7回表、リリーフ投手のケビン・シーグリストはレッドソックスの攻撃を3人で片付けました。その前の回、レッドソックスはケリーとそれをリリーフしたライアン・チョートとセス・メネスを攻め立て、1点を奪っていたので、ここでのシーグリストのリリーフは大きかったと言えます。その後の攻撃でカーディナルスは2点を奪い、逆転を果たします。

そして問題の9回表、カーディナルスのトレバー・ローゼンサルはワークマンを含めたレッドソックス攻撃陣を三者凡退で終わらせました。ローゼンサルは、その前の回に失点をしていましたが、その失敗を取り返すことにより、9回裏のカーディナルスの攻撃につなげる事が出来ました。

1回表の三者凡退はともかくとして、接戦において、特に流れが相手に傾きかけている時点において、投手が三者凡退の攻撃を与えることは、自分たちのチームの攻撃にとって重要だと思います。カーディナルスは、リリーフ投手が打たれた場面がありながらも、それができていました。一方でレッドソックスにはそれができていませんでした。特にこの試合では、絶対的に信頼していたふたりの日本人リリーフ投手、田澤純一と上原浩治で(どういう形であれ)失点したのが大きかったです。いや、もしかしたら、ジャック・ウェルチが言うように、この2人だけでリリーフを務めさせてもよかったかもしれません。

一方で、カーディナルスは他にも得点機会はありました。例えば、3回裏、マット・ホリデーが打ち上げた大きなフライをジャコビー・エルズベリーが失策した際、ホリデーは中途半端な走塁により一塁でアウトになりました(その後、7回裏にホリデーは田澤から逆転打を放ちます)。4回裏、カーディナルスはノーアウト満塁の大チャンスで無得点に終わりました。特に満塁となった直後の打者で、このシリーズの「鍵」を握る8番のピート・コズマが見逃し三振で終わったのは、カーディナルスへ来るはずの流れを止めることになりました。

いずれにしても、カーディナルスの失策が目立った第1戦以外の二戦は、どちらもギリギリのライン、いうなれば”thin red line”の上を歩いているようなものです。空の上から降ってくる好機という紐なり綱をうまくつかみ、細い線を太くしっかしとしたものにできるチームはどちらでしょうか。

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[2013ワールドシリーズ 第1戦] Miscue, Miscue

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Boston Red Sox capitalize on St. Louis Cardinals’ miscues in Game 1 win | MLB.com: News (2013/10/24)
Precision tools: Lester’s gem, fast start power rout | MLB.com: News (2013/10/24)
Boston Red Sox pitcher Jon Lester clicks on all cylinders, A to Zane – ESPN Boston (2013/10/24)
Cardinals drop the ball in ugly World Series Game 1 loss to Red Sox – MLB – Tom Verducci – SI.com (2013/10/24)

97勝65敗という、リーグ最高成績を収めたボストン・レッドソックスとセントルイス・カーディナルスが戦う2013年のワールドシリーズは、試合前から絶対に最高のシリーズになるという声で埋め尽くされていました。両チームとも、成績だけでなく、強力な投手陣、抜け目の無い打撃陣、ミスの少ない守備、いずれの性格も似たチームだと言えるでしょう。それどころか、両チームは、どちらの街にとっても大きな事件-ボストンマラソンでの爆発事件と、スタン・ミュージアルの死去-の直後のポストシーズンで、ワールドシリーズまで上り詰めました。そして、両チームとも、リーグチャンピオンシップでは相手のミスを上手く活かした形で勝利を重ねてきました。カーディナルスは、ドジャーズのヤシエル・プイーグの2つの悪送球を、レッドソックスはタイガースのプリンス・フィルダーの中途半端な走塁をきっかけとして、地元で戦った第6戦でシリーズの決着をつけました。

しかし、最高のシリーズになるという期待を抱いてワールドシリーズ第1戦を見ての感想は、レッドソックスが勝ったというより、カーディナルスが負けたというべきものでした。それはカーディナルス先発、アダム・ウェインライトが最初の打者、ジャコビー・エルズベリーと対戦したときからすでに予言されていたようです。ウェインライトは試合前、ダッグアウトからグラウンドへ出る際に、頭をダッグアウトの天井にぶつけたそうです。それが影響したわけではないでしょうが、ウェインライトはエルズベリーに7球投じて、結局四球を与えました。これがすべての始まりだったのかもしれません。

その後、1アウト1・2塁の場面で、ショートのピーター・コズマの落球によるエラーが起こります。最初、このプレイはアウトと判定されましたが、レッドソックス監督のジョン・ファレルの抗議により、判定が覆りました。これはそもそも抗議が起こる前にセーフと判定されるべきプレイだったのですが、結果的には、ファレルはこの抗議により上手く試合の流れを掴み直し、決め球に悩むウェインライトの投球の調子を狂わせることもできました。レッドソックスはここから3点を奪います。
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そして2回裏、ウェインライトとカーディナルスの内野陣は先頭打者のスティーブン・ドリューが放った高いフライボールを見失いました。これはエラー扱いにならなかったとはいえ、カーディナルスでは考えられないプレイが2イニング連続で出たことに、レッドソックス以外のファンは驚きを隠せなかったことでしょう。レッドソックスは動揺を隠しきれていないウェインライトを攻め立て、満塁からダスティン・ペドロイアのヒットで4-0とし、デイビッド・オルティーズが打席に立ちます。オルティーズはウェインライトの甘いボールを右中間のブルペンへめがけて大きなフライを打ち上げますが、ここで16年目にしてワールドシリーズ初出場のカルロス・ベルトランがフェンスにぶつかりながらも捕球しました。これは犠牲フライとなり1失点となったものの、ウェインライトはダッグアウトに頭をぶつけて以来、ようやく目を覚ましたように感じました。ただしこれはカーディナルスとベルトランにとっての「犠牲」フライともなり、フェンスにあばら骨を打ったベルトランはその後フィールドに戻ることはありませんでした

この第1戦、もしかしたらこのシリーズ全体がこの2イニングに凝縮されているかのうような印象を受けます。それも、レッドソックスがウェインライトを打ち崩したというより、カーディナルスが自滅した点があまりにも目立つ内容でした。多くのスポーツニュースのサイトを見ても、レッドソックスが勝利したこと以上に、カーディナルスがこの大舞台の序盤でミスを犯した事のほうが大きく取り上げられているように感じられます。確かにこれまでのワールドシリーズ第1戦でも、ミスを犯して負けたチーム、あるいはそこに乗じて勝利したチームはあるのですが、これほどまでにミスに対して焦点が当てられた第1戦は、正直なところ最近記憶にありません。もちろん、レッドソックス先発のジョン・レスターは素晴らしい投球でしたし、一方でウェインライトは3回以降の投球は素晴らしいものがありました。本来であればこの2人の投手戦で、どちらのチームが数少ない得点機会をモノにするのか、が楽しみなところであったはずです。それほどまでにカーディナルスの負け方は印象的なものになったと言えるでしょう。

ちなみに、ウェインライトが3回裏にレッドソックスを三者凡退に抑えた直後の4回表、カーディナルスは1アウト満塁で得点のチャンスを迎えましたが、デイビッド・フリースが併殺打に倒れました。そのような機会があったこと、ウェインライトの投球がそうした機会をもたらしたことは薄い記憶にすら残っていないことでしょう。同時にこの場面では、過去のワールドシリーズで大活躍をしたフリースが、体調面の影響もあり、今年のポストシーズンを通じて、攻撃でも守備でも過去のような働きができていないことが明らかになりました。カーディナルスはフリースをそれでも使い続けるのかどうかが鍵になりそうです。

9回表に出たマット・ホリデーの一発は、第2戦を前にしてカーディナルスの嫌な空気を吹き飛ばすことができるでしょうか。もしくは、QB不足に悩むセントルイス・ラムズがブレット・ファーブ獲得に動いた(そして失敗した)という、とんでもないニュースが、カーディナルスに浴びせられる冷たい視線を和らげることができるのでしょうか。一方、2004年のワールドシリーズから通算9連勝中のレッドソックスは、これまでどおりに戦えれば勝機があることが第1戦を通じてわかりました。第2戦はどのような光景が見出しを飾るのでしょうか。でも、それが落球やお見合いしている場面ではないことを祈りたいです。

Closer implosions galore as Jose Valverde, Andrew Bailey lose jobs

FCC has no problem with Big Papi’s speech

This is Papi fashion of #bostonstrong

[短評]平穏までの1マイル

これは4月15日(現地時間)の午後、ボストン警察のツイッターに上げられた、ボストン・マラソンの模様を撮影したものです。4月の第3月曜日、マサチューセッツ州をはじめとしたアメリカの一部の州では”Patriot’s Day”として祝日となっていますが、ボストンにとっての”Patriot’s Day”とは、ボストン・マラソンを一大イベントとして祝う日です。このとき、警察は主に交通整理や、ちょっとしたトラブルのような不測の事態に備え、それぞれの持ち場で円滑なマラソンの進行に貢献します。そのはずでした。

この写真がツイッターにアップロードされる中、犯人の兄弟はゴール地点で圧力鍋で作った爆破装置と共に、「その時」を待ち構えていたのでしょう。世界的にも知名度が高く100年以上の歴史を持つ、平和なスポーツ大会の光景は、約90分後、おそらく歴史的になるであろう爆破事件により打ち砕かれました。そして犯人兄弟にとって、ゴール地点での混乱こそが自分たちが主役となるテロという「ゲーム」のスタートになりました。

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その瞬間、交通整理にあたっていた警察官と、非番になっていた警官はテロとの戦いに入りました。また本来マラソンランナーの救護にあたるために設けられていたエイド・ステーションは、即座にトリアージとなりました。そしてあの爆破以来、ボストンは平和なアメリカ東部の街から、悲しみと恐怖の中で暮らすことを強いられる、アメリカで最も危険な街へと一変しました。この爆破事件により失われた命は3名でした(その後、最終的に犯人逮捕と射殺に繋がる銃撃事件でも犠牲者が発生しました)。しかし犠牲者の数ではすべてを推し量ることはできません。その衝撃は、オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件や、9.11と全く変わらないものでした。それは、この事件が平和な祝日、それもアメリカに感謝をする祝日に行われる、平和なマラソン大会を、2つの爆破装置で悲しいできごとにしたからに他なりません。

ちなみに、この中で特に悲しかったのは、最初の犠牲者となった8歳のマーティン・リチャード君の話です。これは現地木曜日の午前中、オバマ大統領が追悼式典で、マーティン君が次のようなバナーを持って写真を撮ってもらったと紹介しました。

No more hurting people. Peace.

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事件のとき、マーティン君のすぐとなりに犯人がいたと報道されています。その犯人には、マーティン君の願いは全くもって聞き入れられませんでした。

この事件の直後から、全米中がボストンを支援しようとする空気を包み込みました。その象徴のひとつが、事件の翌日にヤンキー・スタジアムで行われた試合で、“Sweet Caroline”が流されたことでしょう。

この曲は、ボストンを象徴するスポーツチームであるレッドソックスのホームゲームにおいて、8回表が終わると必ず流されます。それがボストンとレッドソックスを最も嫌う都市のチームのホームゲームで流されたのです。普段、レッドソックスとヤンキーズは罵り合う仲ですが、そうしたことができるのは、平穏な生活というものを基盤としていたことに気付かされました。あの事件を境に、それすら許されない状況となったのです。

Diamond happy ‘Caroline’ offers comfort – MLB – CBSSports.com (2013/4/19)

レッドソックスはPatriot’s Dayの昼間に試合を行い、爆破事件の直前に試合を終え、空港から遠征へ向かいました。爆破事件の後、最初に行われたボストンでのプロスポーツは、NHLのバッファロー・セイバーズ対ボストン・ブルーインズ戦でした。
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For Boston, a time to heal, a time to play hockey – Sports – The Boston Globe (2013/4/18)

確かにTDガーデンへ入るには、セキュリティ上の問題により、通常よりも時間を要しました。それでも17,000人を超えるファンはこの夜最も安全な場所であるTDガーデンへ、いつものように地元チームを応援するために駆けつけました。いつもと同じことをする、それこそがボストンの市民にとってテロとの戦いに他ならなかったのです。この試合であるファンがこのようなバナーを掲げていたそうです。

“BOSTON’’ read one sign in the front row of the upper bowl, directly behind the net the Bruins defended in the first and third periods. “Beacon Of Strength That Overcomes Negativity.’’

そして、そのような力強さののろし(beacon of strength)を示すために行わた、試合前の17,000人を超えるファンによる国歌斉唱。映像を見るだけでいろいろなものが伝わってくることでしょう。

傷つけられたスポーツを癒すためのスポーツの試合が行われ、続いてオバマ大統領夫妻列席の元での追悼式典(Interfaith Service)が行われました。大統領が次のような力づい良い言葉で演説を締めくくり、ボストンは一歩ずつ前へ進みだそう、そのような空気が漂い始めました。

(T)his time next year, on the third Monday in April, the world will return to this great American city to run harder than ever, and to cheer even louder, for the 118th Boston Marathon. Bet on it.

しかしこの式典から約10時間後、ボストンはふたたび緊張に包まれます。それは犯人の兄弟にとって、爆破事件に続く力の誇示でした。それはまるでこの兄弟がFBIや警察に挑戦をしているかのようにも思えました。彼らは黙って逃げ回ることを選ばず、マサチューセッツ工科大学付近で発砲事件を起こし、大学の警官を射殺しまいた。一方で第一容疑者とされた兄も警察により射殺され、第二容疑者で、危険物を所持しているとされた19歳のジョハル・ツァルナエフが住宅街へ逃走しました。この1人を追うため、事件解明のために「生きた状態で」身柄確保するため、すべての捜査当局が総動員となります。すべての交通機関が止められ、ボストン市民に対して外出を控えるよう指示が出されるまでになりました。ボストン市民の心の支えになっていたスポーツの試合、レッドソックスとブルーインズの現地金曜日の試合は、早々に中止が発表されました。

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The games will go on, but Friday in Boston was no day to play – CBSSports.com (2013/4/19)

そして、タクシーやバスが動き出し、外出制限も解除され、極限の緊張感がゆっくりと緩みだした頃、ついにこの時を迎えました。

この瞬間、事件現場の近所からは歓喜の声があがりました。今までに経験したことがないであろう緊張感に縛られた住民たちは、静かに引き上げる警察や捜査関係者に対して感謝の念を開放感たっぷりに伝えました。
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そのような中でも、ボストン警察は非常に冷静に、このようなことをつぶやいたのがまた印象的でした。

穏やかに晴れた平和な春の祝日「愛国者の日」で始まったボストンの2013年4月第3週は、その歴史の中で最も悲しく、「クリミナル・マインド」の中の世界をはるかに超える恐怖と緊張を強いられる1週間となりました。犯人が無垢な市民とマラソンランナーへ牙を剥き、ボストンだけでなくアメリカ中を震撼とさせる一方、さまざまな英雄的な行為も見られました。前者が非愛国的だとするならば、後者は愛国的と呼べるのかもしれません。しかし、そのような英雄的な行為ができるだけ少なく済むことこそが本来重要なのではないかと思います。そして、このような事件を通じてアメリカへの忠誠心の再確認と強化がなされることは良いことだと言える反面、そのことがこうした痛ましい事件を通じなければ達成できないという悲しいにも気付かされたように感じます。それこそがマーティン君の願いであり、彼は文字通り命を張ってそのことを主張しました。でも、今は事件解決に力を尽くしたすべての人たちを大いに祝うべき時です。

ボストンは絶望的なな恐怖と悲しみ、異常な平穏、異質な緊張感を経て、本来あるべきボストンに戻って来ました。この1週間は、ボストン史上最も長い1マイルでもありました。

[MLB短評]Spice Boys

Kevin Youkilis says he’s proud to be a member of the New York Yankees – ESPN New York (2013/2/15)
http://msn.foxsports.com/mlb/story/former-boston-red-sox-kevin-youkilis-says-heart-is-with-new-york-yankees-021513 (2013/2/15)
Los Angeles Angels’ Josh Hamilton says Dallas-Forth Worth ‘not true baseball town’ – ESPN Dallas (2013/2/19)

アメリカのスポーツ界でも屈指のライバル関係である、ボストン・レッドソックスからニューヨーク・ヤンキーズへ移籍した選手は、ベーブ・ルース以来これまでに何人もいます。そのリストに今年ケビン・ユーキリスが加わりました。ユーキリスは昨年6月末、惜しまれながらもレッドソックスからシカゴ・ホワイトソックスへトレードされた後、今年からヤンキーズの一員になります。

もともとユーキリスはヤンキーズの選手、特にジャバ・チェンバレンとの不仲の関係にありました。チェンバレンが何度もユーキリスに対してボールを当てたことがあるためです。それほどまでに、ユーキリスはヤンキーズにとって、そしてヤンキーズファンにとっての目の敵でもありました。

そのユーキリスがキャンプイン早々(2月14日)に、このような発言をしたことがヤンキーズファンの怒りを誘うのに十分なものになりました。

“I’ll always be a Red Sock. To negate all the years I played for the Boston Red Sox, and all the tradition, you look at all the stuff I have piled up at my house and to say I’d just throw it out the window, it’s not true. Those were great years in Boston. One bad half-year doesn’t take away from all the great years I had there.

この”always be a Red Sock”との発言は、ヤンキーズファンにとり何を言わんや、というところでしょう。

しかし、ユーキリスはいわゆる失言をしたわけではありません。ユーキリスはこの最初の文だけが独り歩きしていることを心配し、翌日にはこの発言が意味するところを説明せざるを得ませんでした。

I was basically defining that, as a player, I’ll be a Red Sox, and a White Sox, and a Yankee for life. Three storied franchises. I’m excited to be part of this, and be with the Yankees. ‘Trust me, there’s no way that was meant to say my heart is in Boston or anything like that. My heart is here with the Yankees.

そう、ヤンキーズのユーキリスは別にレッドソックスが恋しくあのような発言をしたわけではありません。かつてレッドソックスやホワイトソックスという歴史あるチームに在籍していたこと、そして今はやはり歴史あるヤンキーズに在籍していることへの喜びを語っただけです。

ただ、ヤンキーズファンはレッドソックス、ボストンという言葉に非常に敏感に反応します。それにメディアも少し乗っかったところはあるでしょう。それほどにヤンキーズとレッドソックスのライバル関係は歴史的にも強いものだと感じさせてくれます。

一方、長年続くライバル関係とは逆に、テキサス・レンジャーズとロサンゼルス・エンジェルズとのそれは比較的新しいものです。特にレンジャーズが優勝を狙えるパワーチームになって以降、その関係が一気に強くなりました。そして、2011年オフのC.J・ウィルソン、2012年のジョシュ・ハミルトンがレンジャーズからエンジェルズへ移籍したことが、ライバル関係を加速させたように感じます。

そのハミルトンが、ダラス・フォートワースの地元局とのインタビューに対して、「テキサスには熱心なファンがいるが、本当の野球の街ではなく、フットボールの街だ」と発言しました。さらにこう続きます。

They’re supportive, but they also got a little spoiled at the same time pretty quickly. You think about three to four years ago (before two straight World Series appearances in 2010 and 2011). It’s like, come on man, are you happier there again?

確かに3-4年前のレンジャーズのスタジアムでの試合を見ると、あの巨大なスタジアムを持て余すかの空席の多さが印象的でした。その後、いざチームが強くなると、あのスタジアムがローマのコロシアムに変わったかのような威圧感を帯びるようになりました。その意味では、ファンは”supportive”と言えます。しかし、ハミルトンは昨シーズン、絶好調だった前半とは対照的に、後半に調子を落とし、さらにオークランド・アスレチックスとのシーズン最終戦ではフライを落球し、ワイルドカード・プレイオフでもボルティモア・オリオールズ相手に抑えこまれました。

ハミルトンは数々の私的な問題を抱えながらもテキサスの地にやってきて、MVPクラスのチームへの貢献をし、レンジャーズの顔にまでなりました。そこにはレンジャーズのファンの助けが大きかったはずですが、昨シーズンの終盤に関していえば、レンジャーズとハミルトン、ハミルトンとレンジャーズファンとの間に隙間風が生まれました。こうした状況が、エンジェルズのハミルトンに「テキサスは野球の街ではない」という発言を産んだのかもしれません。

ハミルトンとエンジェルズは4月5日にアーリントンでレンジャーズと対戦します。ハミルトンはそのときにファンが複雑な反応を見せるのではないかと見ています。

It will be mixed feelings from the crowd. People who really get it will cheer and the people who don’t will boo. Either way, I’ll do what I got to do to help my team win.

ユーキリスとハミルトン両方に共通しているのは、どちらも間違った発言をしたとは考えていない点です。もちろん、ユーキリスのように誤解を生まないためにも詳しく説明する必要があったこともまた事実です。しかし、彼らは自身の思うことをそのまま述べただけであり、メディアはそれを取り上げただけです。これを失言かどうかと考えるのは受け手(つまりファン)です。

そして、まだシーズンが始まる前にも関わらず、こうした発言が両チームのライバル関係にスパイスを与えることは間違いないでしょう。

[MLB短評]新制度1年目

Anthony Castrovince: Clinches call for different celebrations | MLB.com: News

2012年のメジャーリーグのレギュラーシーズンが驚くような形で終了しました。

半年以上前、東京で開幕戦を行ったオークランド・アスレチックスは、初戦を落としたため、残り160試合において一度もディビジョン単独首位に立つことはありませんでした。しかし、アスレチックスは162試合目にして単独首位に立ちました。それはそのままディビジョン優勝を意味します。長い間首位に立っていたテキサス・レンジャーズは、13ゲーム差も、最後の試合での4点差も、安全なリードではないことを思い知らされました。レンジャーズは今シーズン前半、圧倒的な勝率で今年こそはワールドチャンピオン、ジョシュ・ハミルトンは間違いなくMVPと考えられていましたが、MVPはまず難しく、ワールドチャンピオンになるには1試合多く戦わなければならなくなりました。


今年からメジャーリーグではプレイオフ進出チームが1枠増えました。これは昨年の162試合目にあったタンパベイ・レイズとボストン・レッドソックスのプレイオフ争いに感化されたものなのでしょう。確かに勝率を基準に出場チームを決めるワイルドカード自体は悪い制度ではありません。むしろ、他のディビジョンにいれば優勝すらできたのに、というチームにも公平に出場機会を与える制度だと思っています(その点、5割を割っても3位ならば日本シリーズに出る可能性が与えられる日本のプロ野球のプレイオフ制度とは違う)。ただ、個人的にも、そして一部の声にも、一枠増やしたことは「救済策」ではないか、特にアメリカンリーグのイーストからプレイオフ進出できるチームを増やすための措置ではないかとも考えられていました。そのようなことをしなくても昨年の162試合目はあれだけ盛り上がったのです。

しかしいざシーズンを振り返ってみると、昨シーズンあと一歩でプレイオフを逃したレッドソックスにとって、プレイオフの枠がひとつ増えたことは全く関係ありませんでした。レッドソックスは今シーズン46年ぶりに最悪な結果となったばかりでなく、最後のヤンキーズとの3連戦を全て負け、オリオールズとヤンキーズとの「163試合目」をお膳立てすることすらできませんでした。そしてボビー・バレンタインは1年も経たないうちに監督職を追われました。

むしろ、プレイオフの枠がひとつ増えたにより、ディビジョン優勝の価値が上がったというべきでしょう。今年からのプレイオフのフォーマットでは、ディビジョン優勝のチームは自動的に最大で5戦行われるディビジョナル・プレイオフから戦うことができます。一方でワイルドカードでプレイオフ枠を獲得した2チームは、まず1試合のプレイオフを戦った後、ディビジョン優勝チームとの間で最高の勝率を収めたチームと戦います。それは、1試合でポストシーズンが終わる可能性がある、ということです。NFLのプレイオフでは、各カンファレンスの勝率上位2チームは、プレイオフ初戦を戦わずに済みます。メジャーリーグは、ディビジョン優勝チームにこれと似た効果を与えたかったものと考えます。

同時にそれは、プレイオフ進出を決めたからといって、そこで安泰してはいけない、あるいはもっと上を目指すべきということを各チームに警告したようにも思えます。レンジャーズはその罠に引っ掛かり、最後のアスレチックスとの直接対決で3連敗を喫しました。逆にヤンキーズとの直接対決が9月中旬で終わったオリオールズは、他力本願的に163試合目での逆転優勝を狙うべく戦ってきましたが、その希望は潰え、タンパベイからアーリントンへ飛んでレンジャーズとの対戦に挑みます。それでも、1997年以来のプレイオフ進出は目を見張るべきことです。

それでも、メジャーリーグはここまでの盛り上がりを予想しなかったはずです。同時に、多くの評論家もファンも、大金を使いチームの補強を行ったチームがことごとく162試合目を前にしてプレイオフ戦線から離脱するとも考えていませんでした。

新制度開始1年目にして、アスレチックスはこの恩恵に預かり、レンジャーズは想像もしない形で無駄に1試合多く戦わざるを得なくなりました。その喜びと落胆の感じは、両チームのFacebookのヘッダー画像にもくっきり現れているように感じます。

メジャーリーグのプレイオフは現地時間から金曜日に始まります。この1試合がポストシーズンを左右するような試合になるのかどうなのか、まずは楽しみたいと思います。

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