[短評]クライマックスリリーズと選挙制度改革

NPB playoff format less than ideal | The Japan Times Online (2012/10/21)
リーグ優勝しなくても「日本一」に あなたはクライマックスシリーズを支持しますか? – goo ニュース畑 (2010/10/20)

アメリカでは昨年以上にメジャーリーグのプレイオフが盛り上がっている一方、日本でもプロ野球のクライマックスリリーズが盛り上がっている、のだと思います。「思います」というのは、観ていないのでなんともいえないということです。自分がフォローしているアカウントにもよるのだけど、Twitter上では朝から昼にかけて、メジャーリーグのプレイオフの実況ツイートが評論家やプレイオフとは関係ない選手を含めたスポーツ関係者から多くなされるのに対して、夜に行われてるはずの日本の野球に関しては、ほとんど流れてきません。家に帰っても、朝に行われた試合の録画を見るので終始してしまい、クライマックスリリーズがあったことすら忘れさせてくれます。

これらのことはあくまでも個人的な生活パターンなので参考にはなりませんが、多くの人がクライマックスリリーズの仕組みあるいはクライマックスリリーズそのものに疑問を感じているのは確かでしょう。それがTwitter時代において、日本のプロ野球のポストシーズンがクライマックスに達しない要因なのだと思います。

クライマックスリリーズ導入当初から、首位からかけ離れたゲーム差のチーム(場合によっては5割以下の3位チーム)が日本一を決する試合に出場できてしまうことの不可解さは言われ続けていました。いや、言われ「続けて」いるほど今でも関心が保たれているのかも不確かですが。その不均衡さを是正するため、リーグ1位のチームには1勝のアドバンテージを与えたり、リーグ1位のチームが全試合を主催できるようにするなど、一応の策を打ち出しています。それでも、こういう考え方が産まれてしまいます。

確かに、レギュラーシーズンに首位と10.5ゲーム差を付けられながらも、中日ドラゴンズは現状のルールの下で日本シリーズ出場まであと1勝まで来ました。しかし、問題はその入口よりも手前のところにあると思います。そのルールがおかしくて少しでもそのゲーム差に引け目を感じるようなものであるのであれば、それを直す、あるいはいっそのこと無くすことで、制度をよくすることが重要なのではないでしょうか。口約束や慣習法と違い、明文化されたルールの存在意義は、それを順守することと同時に、それを変えることで、より良い制度を作り上げることにあるはずです。

これを見て思い出されるのが、現在の衆議院の選挙制度改革の議論です。最高裁が現在の一票の格差を違憲状態だと判断を下して、これまで放置しつづけてきた国会議員は、やっとこの問題は動き出したかのように見えます。しかし、その任期満了が近づく中、与野党は実のところ、この改正よりも先に衆議院をいつ解散させるのかの議論に躍起となっています。そもそも「0増5減」程度の「改正」で選挙制度そのものが良くなるとは考えられないのですが、現状ではその改正すら行われないまま選挙が行われる可能性もあります。それでも、衆議院は現状のルールの下で当選した議員により運営されることでしょう(ただし、最高裁が違憲状態だと言う制度下で行われる選挙が、後に違憲判決で選挙が無効になる可能性があるともいわれています)。

どちらにも共通しているのは、外から見える風景は疑問を感じるものであっても、中の人達がそれを変えるあるいは見直す意思が外から見えない点です。唯一の違いは、最高裁が違憲状態だと認めているかいないかだけです。現状の制度はおかしい、それでも決まったルールだから従わなければならない、それが日本流民主主義なのでしょうか。

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[短評]少年法の幼児的尊重理由

【2012年2月4週】気になるニュースや話し合いたいテーマはこちらまで

山口県光市の母子殺害事件の被告は、最高裁によって死刑が確定しました。同時に各メディアは事件当時まだ少年法適用の年齢だった被告の実名を掲載し、なぜ実名公開に踏み切ったかの説明を記事及びニュース内に加えました。例えば朝日新聞はこのように述べています。

朝日新聞はこれまで、犯行時少年だった大月被告について、少年法の趣旨を尊重し、社会復帰の可能性などに配慮して匿名で報道してきました。最高裁判決で死刑が確定する見通しとなったことを受け、実名での報道に切り替えます。国家によって生命を奪われる刑の対象者は明らかにされているべきだとの判断からです。本社は2004年、事件当時は少年でも、死刑が確定する場合、原則として実名で報道する方針を決めています。

しかし「少年法の趣旨を尊重」を盾に少年犯罪者の実名を一律で控える必要があるのでしょうか。現状では同法第六十一条により少年犯罪者の実名報道は禁止されています。それでも一部のジャーナリストにより実名が雑誌などに掲載されたり、インターネットで知ることもできる時代です。実名非公開が国内事件で行われるならまだしも、日本のメディアは海外で発生した少年犯罪でもご丁寧に名前を顔を隠す有様です(ワシントンDCの連続銃撃事件でのジョン・リー・マルボなど)。マルボの顔と名前なんて、2002年秋、CNNのトップページを見れば誰もが見ることができたし、NHKの衛星放送でも、CNNのニュースではふつうに名前と顔を出していました。そうした光景を見て不思議に思わないメディア関係者の神経に疑問を感じました。

少年審判を経ての裁判という手続きは、年齢による責任能力の問題をも考えるべき必要があるので、それ自体は百歩譲ります(刑法及び刑訴法の改正をすれば、通常の刑事裁判手続でも少年の更生は可能だと考えますが)。むしろ更生(社会復帰の可能性)という「少年法の趣旨」が、審判が死刑か無期懲役かというほぼ更生の可能性がない裁判手続きへ移行してもなおも影響を与えなければならないのでしょうか。この記事内では、被告は「犯行時の年齢が最も若い死刑確定者」と書かれていますが、結局メディアが尊重してたのは法趣旨ではなく犯行時の年齢ではないのかとすら思ってしまいます。法趣旨に疑問を感じる大手メディアはほぼ皆無だったのではないでしょうか。

事の重大を問わず、全ての少年審判及び裁判の被告を実名で出すべきとまでは言いませんが(例えば「軽微な」事件での実名報道までしなさいという面倒くさいことは求めません)、少年法による一律の縛りは時代の変化に対応できておらず、今回のような裁判では報道の自由及び知る権利に対する障害ですらあります。個人的には少年犯罪であっても実名は、原則公開をしてもいいと思いますが、少なくともその可否は審判及び裁判担当の裁判長が各案件毎に判断すればいいと思います(これはイギリスで発生したジェームス・バルガー事件の裁判手続を参照)。それにより実名を掲載するかどうかは各社が決めればいいのです。

ただし今回のようにもっともらしい理由を引っ張り出して、横並びでしか動くことができない、かつ現状の少年法に疑問を呈することもせず、当たり前のように尊重することしかできない日本のメディアが、各社の判断を忠実かつ正確に実行できるかどうかは疑わしいところです。

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