日本文化への関心を一過性のブームで終わらせないためにできることは?

日本文化への関心を一過性のブームで終わらせないためにできることは?- gooニュース畑

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震災後の日本文化振興【渡邊 啓貴・東京外大教授】 | OPINION 3/11

これは以前にも書いたことなのですが、日本政府が「イメージアップ」つまり傷ついた評判を「隠す」ために「さらなる文化外交」をするなら笑止千万です。それどころか、絶対にやってはいけないこととして紹介したものです。政府は原発事故以前から情報隠しが上手だから、それも必要なのでしょうが、ポップカルチャーから現実の原発事故まで全て見せた上で今の日本を判断してもらうべきです。

原発事故が起きた日本の現状を海外に正確に伝えるには?

おまけに、上記の渡邉教授の文章のうち、二段落目では「官民一体となった広報文化活動の強化」を個別に紹介しています。しかしこれは単純に省庁名の羅列で、これから戦略性を見出すことができるのでしょうか。「隣の省がやってるからうちでもやらねば」という利権取りの一貫で、「クールジャパン」「ソフトパワー」の名を借りて、各省庁が予算取りに走っているだけではないでしょうか。これでは法務省や宮内庁や消費者庁までもが「文化外交」を何かやりかねない状況です。

この文章に即して、政府がまず行うべきことは、海外で販促活動を行う以前のことです。それは政府しかできないこと、海賊版対策や国内外の著作権手続きの簡素化及び「Cruel Japan」というべき労働環境の改善(例えば「名探偵コナン」などの背景画を手がける制作会社が社員に訴えられた、残業代未払いという労働法上基本的すぎる問題への対策)などです。これは以前載せたリンクですが、例えば日本のテレビドラマは日本国内の権利関係が複雑なためネット戦略を打てず、馴れ合いと権利の上に眠る者のせいで作品全体の質が低下し、輸出産業とはなりえていません(制作側も世界に売れるドラマを作る気などないのでしょう)。

コラム:海外ドラマはライバル!? 日本が100%ドラマ輸入国にならないために!!(3年越しの大改訂版) | 海外ドラマNAVI
[短評]ドラマ負債国

確かに今の日本文化は新旧問わず世界にも広く伝わっていますが「深く」伝わっていると言えるのでしょうか。それこそ日本文化は「知られてる」程度であり、それはジャポニズムの延長戦でしかないと思います。そうである限り日本文化への関心は一過性のブームで終わります。

それを打破するには、国内制作部門の意識改革こそ必要です。それは戦後からバブル期までの一般的な製造業と同じで、文化の輸出だからといって話が変わることではありません。世界で売れるものを作るという強い意識があば、政府のあからさまな海外での販促なしに日本文化は企業により勝手に輸出され、世界で売れます。「日本で売れている」とだけ世界に伝わっても、それは土着文化の紹介です。世界で売れて利益を出すことができて初めてジャポニズムを超えると思います。だからこそ、政府が行うべきは制作者の意識改革を促す「国内の」政策や法律改正です。それをしないなら、政府は黙っていろとすら言いたいです。

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[短評]気持ち悪い自画自賛

「新聞読む」87% 「影響力」「正確」震災後評価高まる (産経新聞 2012/3/9)
新聞を読む人は87%、震災後に新聞の評価高まる
-新聞協会が「2011年全国メディア接触・評価調査」結果を発表- (日本新聞協会 PDF)

信じがたいのですが、日本新聞協会が行った「2011年全国メディア接触・評価調査」において、東日本大震災後の新聞の印象について「評価が高まっている」との結果が出たそうです。これがもし「東日本大震災”直後”の新聞の印象について評価が高まった」であれば納得してもいいかと思います。いや、あのような混乱時にまともな情報を流すことができないのであれば報道機関としての役割がないのに等しいのであり、やって当たり前のことに評価を下しても仕方ないです。いうなれば、救急車が確実に急患を病院に運んで「消防署への評価が高まった」と言ってるのと同じだからです。

実際のところ、震災前の新聞をはじめとしたメディアの凋落ぶりには目を当てられません。例えば原発事故後、数々の原発の安全性を疑う証言や文書があることが報道されました。なぜそうしたものはもっと前から報道できなかったのでしょうか。共産党の新聞「赤旗」は福島の原発の安全性について震災前に報道していましたが、共産党であるがゆえ、それはほとんど知られることはありませんでした。メディアは過去の原発報道に対する検証すらしようとしませんが、原発に不利な報道をしなかったのは、一部で言われるように東京電力に屈していたからなのでしょうか。同時に以下の記事が示すような、日本の報道が大本営発表の情報を伝えるのが主で「掘り起こし型」報道に弱い体質があるのでしょうか。

ピュリツァー賞と日本新聞協会賞はこんなにも違う (現代ビジネス 2010/4/19)

また「東日本大震災後の新聞の印象」ということであれば、この事件も日本の新聞の信頼を損ねたものとして記録されることでしょう。昨年秋以降騒がせたオリンパスの損出隠し事件で、「ファクタ」以外の国内メディアは当初、オリンパス広報の内容を鵜呑みにした上で、主役のウッドフォード前社長を「日本の文化を知らないガイジン」と評しました。しかし長年日本で暮らした前社長は、日本のメディア(と検察)の無能ぶりを知っていたため、日本のメディアより世界的に影響力があるフィナンシャル・タイムズやBBCなどに事の一部始終を話しました。それがロイターやブルームバーグといった世界的な経済メディアによって日本語で報道されるようになりました。

日本のメディアが事の重大さに気づいたのはそれからもっと後です。しかも、前社長が取締役会のため日本へ来たときには、海外メディアの隣で、前からこの事件を追っかけているかのような顔をした日本のメディアは前社長に対してスーパースター級の出迎えをしました。それでも日本の新聞は「知的」「情報は正確」などと言えるのでしょうか。

日本新聞協会は震災1周年を前にこうした調査結果を出すことで、改めて日本の新聞の有効性を証明したかった、もっというなら自画自賛をしたかったのでしょう。そうした新聞協会の姿勢にも、また震災のような非常時ではなく平時の新聞の報道姿勢に疑問を持たず新聞を異常なほどに信頼しきっている日本国民にも、虫酸が走る思いがします。

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