[半周遅れのスーパーボウル48 その2]納得できない1プレイ
2014/02/10 コメントを残す
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シアトル・シーホークスが守備から試合を作るチームだとすれば、デンバー・ブロンコスは攻撃から、もっといえば、ペイトン・マニングのコールから試合を作るチームだと言えます。それゆえ、プレイオフ期間中に”OMAHA!”と叫び続けたことが注目を浴びたのかもしれません。ブロンコスの、というよりマニングのオフェンスは、一種のオーケストラだと言えます。もちろん、どのチームのオフェンスもQBが指揮をし、他の選手がそれにしたがって動くわけですが、マニングという指揮者は、オフェンスラインの細かい動きをも制御でき、かつ、相手の布陣によってその音色を変えることも容易にでき、他の選手達はそれに対して完璧なまでの動きを見せてくれます。
第48回スーパーボウルにおいて、コイントスに負けたブロンコスは、前半の攻撃権を得ました。マニングが強力なシーホークス守備陣、特に強力なDB陣を相手にして、どのようなプレイを展開していくのか、コイントスからブロンコス最初のスナップまでの、決して長くない時間に、スタジアムのファンも視聴者もいろいろなことを思い描いていたことでしょう。
しかし、第48回スーパーボウルは、その試合結果と同じくらい、予想外なプレイで始まりました。センターのマニー・ラミレスの早まったスナップによるセーフティ(以下にあるように、記録上はファンブル)。スーパーボウルでは試合開始から最短での得点、そしてマニングが指揮をするオフェンスおいて最も考えられないプレイが、ブロンコスのコーチ陣が築きあげたゲームプランと、2週間温め続けてきた人々の期待を打ち砕きました。そして、たった試合開始12秒でブロンコスの攻撃は機能不全に陥りました。
1-10-DEN 14 (14:53) (Shotgun) 18-P.Manning Aborted. 66-M.Ramirez FUMBLES at DEN 14, recovered by DEN-27-K.Moreno at DEN -8. 27-K.Moreno tackled in End Zone, SAFETY (56-C.Avril). Penalty on DEN-18-P.Manning, Illegal Motion, declined.
このプレイは、今回のスーパーボウルを象徴するプレイのひとつとなりましたが、それ以上に納得がいかないプレイが前半終了直前にありました。インターセプトリターンTDを奪われた直後、22対0という誰もが予想しないスコアで迎えた前半最後のオフェンスシリーズです。ブロンコスは残り3分16秒で自陣33ヤードから攻撃権を得ました。レギュラーシーズンのマニングのオフェンスであれば、ここから時間を目いっぱいに使って、TDを奪うことができる時間帯と残りヤード数です。その思い通り、マニングはショットガンとノーハドルのオフェンスを駆使し、ジリジリを歩を進めました。しかし、残り時間1分16秒、相手陣26ヤードのところまできて、ブロンコスは3rdダウンを更新できませんでした。一方で1stダウンまでは2ヤード。ここはFGを蹴るかどうか悩みどころであるのですが、この場面でシーホークスがタイムアウトを使いました。
タイムアウト後、マニングたちはオフェンスの布陣を敷き、4thダウンを狙うこととなります。これ自体は正解だと思いました。恐らく、マニングお得意のハードカウントでディフェンスのオフサイドを誘い、1stダウンを奪うのだろうと考えていました。しかし、マニングはプレイクロック残り7秒の時点でプレイを始めました。結果は平凡なパス失敗となりました。
この場面では、ブロンコスは結果的に得点を挙げられなかったどころか、1stダウンを奪うことすらできませんでした。ただ、その結果よりもその過程に疑問を感じました。マニングらしいオフェンスを見せながらも、ここでもうひと押しできなかった時点で、試合のモメンタムがブロンコスへ流れることはないだろうと感じるには容易なものでした。後半直後にブロンコスがキックオフリターンTDをパーシー・ハーヴィんに奪われて、それは確実になりました。
22対0となったとき、球団社長のジョン・エルウェイはこのようなことを考えていたようです。
Just got to figure out a way to get things turned around. But I’ll tell you this: It’s hard to get momentum turned around against a great defense like this and they are a great defense, and that’s why you can’t afford to lose momentum, because to try to flip it against a great defense, it’s hard.
どうも、ブロンコスとしては、あのシーホークスの守備を見せつけられた中では、試合の主導権を奪うことはできないと早々に悟っていたように感じられます。この4thダウンのプレイが、ブロンコスの苦悩を表していたのかもしれません。
マニングがすべての敗戦の責任を背負わなければならないわけではありません。首の手術から復活し、記録ずくめのレギュラーシーズンを経て、スーパーボウルまで来たことは、驚異的なことだとも言えます。そして、マニングはスーパーボウルの前日に5度目のシーズンMVPを贈られました。しかし、マニングは肝心のスーパーボウルにおいて、いつもどおりのことが全くできませんでした。インターセプトされたプレイと同じくらいこの2ヤードのプレイがそれを表しているように思えます。