[MLB短評]選手との対話
2013/02/19 コメントを残す
Toronto Blue Jays’ Jose Reyes blasts Jeffrey Loria of Miami Marlins for trading him – ESPN (2013/2/15)
Blue Jays shortstop Jose Reyes bitter about situation with Miami Marlins’ front office | bluejays.com: News (2013/2/15)
Mike Bauman: Jose Reyes’ gusto resonates with Blue Jays | bluejays.com: News (2013/2/15)
Attention Marlins: This is how you treat players – Yardbarker (2013/2/15)
メジャーリーグは選手の移籍に関しては非常にビジネスライクであるとよく言われます。選手も、自分がどこかのチームへトレードされることは覚悟の上です。それでも、ビジネスは人と人がいて成り立つものである以上、相手方の心を読めないビジネスは相手を不快にさせるだけです。今回ホセ・レイエスが受けた「仕打ち」は正しくそれに当たると言えるでしょう。
一昨年のオフ、フロリダ・マーリンズから名前を変え、新築のスタジアムを完成させたマイアミ・マーリンズは、優勝できるチームを完成させるため、次々と大物選手を獲得しました。この点はフロリダ・マーリンズから引き継いだ「伝統」と言えます。その中での目玉のひとりが、メッツのショートでトップバッターのレイエスでした。マーリンズは6年契約でレイエス獲得後、それまでのショートの先発だったハンリー・ラミレスにサードで守ってもらうよう説得し続けました。そこまでしてでも、マーリンズはレイエスが欲しかったわけです。
しかし、チームは序盤から機能不全を来たし、優勝どころか5割すら狙えることなくシーズンが終了することが夏ごろに明らかになります。そうなると、マーリンズのもう一つの伝統である、大物選手の放出が始まります。ラミレスはシーズン中にドジャーズへトレードされます。その動きはシーズンが終わると共に一気に加速しました。その象徴がトロント・ブルージェイズと交わした大規模なトレードでした。
この12月に行われたトレードの直前、レイエスはマーリンズのオーナー、ジェフリー・ローリア氏と会食をし、オーナーはレイエスに対して「フロリダに家を買ったらどうか?」と持ちかけたと、ブルージェイズとしての初日のキャンプを迎えたレイエスが告白しました。家を買う、つまりそれはこの地で働いて欲しいという意味でもあります。その数日後、マーリンズはあっさりとレイエスを含むマーリンズの大物選手を放出しました。
That was kind of crazy. I mean, how can you want me to spend some money in Miami, when I have my house in New York, and you’re going to trade me in two days?
マイアミで6年間プレイするつもりで南の地へ来たレイエスとエージェントは、この会食の前からも常にオーナーからトレードをしない、住むのにいいところを確保してやって欲しいと言われていただけに、このトレードはショックでかつ未だに信じられないという思いが今でも強いのです。
I was shocked, because Jeffrey Loria, he always told me he’s never going to trade me. He always called my agent and said, ‘Tell Jose to get a good place here to live,’ and stuff like that.
そして、レイエスはもし今後フリーエージェント権を獲得し、マーリンズから声が掛かるであろう選手に対して、このような助言を行っています。
I don’t need to say anything. They see what happened. I signed there for like six years. I played there one year. So I don’t have to explain anything
ちょうどこのニュースが出た際、FOX SportsのKen Rosenthal氏がこのような話を紹介しています。キャンプイン直前、クリーブランド・インディアンズが俊足の外野手でこのオフ最後の大物、マイケル・ボーンを獲得しました。これと並行して、何人かの選手はトレード要員として出されるという噂が流れました。その際に、クリス・アントネッティGMとテリー・フランコーナ監督はそれらの選手に対して、直に会ってチームに残ってもらうことを伝えました。そのときのことを、センターのドリュー・スタッブスはこのように語っています。
As soon it came out, Chris called me. He said, ‘I hope you haven’t heard it elsewhere. I wanted to be the first to tell you what our plans are. We had an opportunity to make our team better. We’re not trying to move you to another team.’
It cleared the air right off the bat. They wanted to take all of the ambiguity out of it, make sure I was comfortable with everything.
このとき、元来センターのスタッブスはボーンの加入により一度も守ったことがないライトの守備を言い渡されるも、それも受け入れています。それが外野の守備向上になるとの考えです。この点は、選手の性格に依るところも大きいけれど、レイエス加入後のラミレスに対するマーリンズの動きとも何だか対照的です。
そうは言っても、これらの選手もいずれは放出もしくは契約解除ということはありえます。それは仕方ないことだとしても、目の前に現れた不安に対して、それを今現在できる範囲で除去する働きをすることも、GMにとっては重要なことだと言えます。アントネッティGMはこのように語っています。
It’s just being honest. Guys like to have some idea of where they stand. For us, while we may not be able to deliver the best news, we always try to be honest and communicate the best we can.
マーリンズのオーナー、ローリア氏は一部ではジェリー・ジョーンズ氏やスタインブレナー一家以上に忌み嫌われるオーナーと考えられています。ローリア氏は画商として財をなしました。すべての画商が彼のような人だとはいいませんが、ローリア氏にとって、絵画も選手も同じような感覚で、「物」を「売買」しているのではないかと感じてしまいます。そうだからこそ、マーリンズは人が強いチームを作るのではなく、勝利を買うことしかできないチームに成り下がっているのかもしれません。